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「ふぅ…じゃったら、そんな俺の友人に敬意を称して一つ真実を教えちゃろう」
「真実…?」

急に畏まったような、でも茶化したような口調の仁王君の言葉を不審に思いその目を見返す。
仁王君は顔の前に手を出し、人差し指を一本立てた。

「俺が今、このタイミングで此処に来たんは偶然じゃなか」
「…どういうこと?」
「ここまで言ってわからんって…あー、やっぱ俺安住さんだけは敵に回しとうないわ」

引きつった顔で話す仁王君に、私はその名前を聞いて思考を巡らせた。
あずみん…?仁王君がこのタイミングで屋上に来たのにあずみんが関わっているとしたら――?

「ん?我ながらいい友人だなー、と」

…私、呼び出しの紙ブレザーのポケットに入れたままだった。
でもそれに気づくような余裕の無い展開でブレザーを私はあっさり脱いで…もし、私が紙をブレザーのポケットに隠したのをあずみんが気づいていたとしたら…それを授業中よっしーと菅野ちゃんにメールしていたとしたら…よっしーが私の箸から卵焼きを食べようとしたのが私自身に水筒を倒させるためで、菅野ちゃんが水筒を掴もうとして指だけ掠ったのは私のブレザーにお茶を上手く零すため、だったとしたら。

「…人の掌の上で踊ったのって、私初めてかも」
「安住さんの天才っぷりもあの三人のチームワークと信頼関係も異常じゃけんな」

同い年で心理勝負に負けたのは初めてだった。
だけど私はそれを悔しいと思ってはいけない。むしろほっとするべきだ。

「ところで、私と仁王君って友達なの?」
「えー、ダメ?」

可愛らしく小首を傾げる仁王君は自分の容姿を自覚しながら女の人はこういうのが好きなんだろと理解している上でやってるんだろう辺り、あざといなぁと思う。


「いいよ」

薄く笑った私に、仁王君は何故か困った顔をして私の頭をぽんぽんと撫でた。

「え、何?」
「いや、赤也の気持ちもわかるなと思っただけぜよ」
「赤也君?」

むしろ私は赤也君の気持ちこそ全然解らないんだけど。

「手に入らないもの程、燃えるってやつじゃ。随一の自覚ある俺でさえ、今漠然と思ったんじゃからのう」

まぁ、それでも俺はあくまで、端から見るのが目標じゃ。
私はよく話がわかっていないまま、そう、と頷いて、空を仰いだ。

手に入らないもの程、燃えるか。確かに。泣きたい程に。

                


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