ホグワーツ見学にマグルがやってきた。

「何か、バックの陰謀感じるよね」
「ねー」

栗のポタージュをスプーンで掬い、また一口口に運んだ。
今日で一週間の内三日目だけど、未だ異例の事態に好奇心旺盛な人達はがやがや、主にスリザリンの純血主義な人達はざわざわと微妙な空気が漂っている。
私やティファニーはと言うと、関係ありませんのでご勝手にどうぞ、と静観している。だってシリウスやジェームズは相当絡まれてるみたいだけど、私には関係ないし。
それに、ただのマグルが望んだだけで学校見学できるなら、兄弟や友達が魔法使いな子の見学で毎週大変なことになるって。絶対面倒な大人の事情でしょ。関わりたくない。
だから此処の所三日は日課のシリウスへの愛の囁きもご無沙汰だ。

「アモ…」
「あらぁ、ジェームズぅ。見ない間に随分やつれたねぇ、うふふ」
「やめて」
「カトーさんだっけ?似てたでしょ」
「似すぎて最悪」

どんよりとした空気を纏ったジェームズに、ティファニーと二人で笑う。自分に全然関係ない、恋愛が絡んだ人の不幸ってちょっと面白い。可哀想だとも思うけど…駄目だ、やっぱり面白い。

「カトー、面食いだよねー。シリウス君が一番被害者かな?可哀想ー」
「ティファニー、顔笑ってる」
「いや、二人とも笑ってるけどね」

仕方ないよ。面白いもん。

「で、ストレス溜まったから今日?オッケーオッケー」
「ありがとう…」

性交で発散でもしないとやってられないんだろうな、と意思を汲み取って笑いながら言えば、ジェームズも疲れた顔ながら笑った。


「アンタね…っ!!」

突如やって来て怒った顔で此方を指さしてきた女に、私とティファニーは顔を見合わせた。このケバい東洋人顔は、確か噂のカトーさん。

「レギュラス君を騙して、私のなのに…っ!」
「あー、レギュラスかー」

ティファニーに心当たりがあるらしい。あれ、いつの間にレギュラス君と付き合ってたんだろう。
私の疑問の視線に気づいたのか、ティファニーはカトーさんから視線を外し、また私を見た。

「昨日から。ごめーん、言い忘れた」
「謝んなくていいけど。変なトラブル起こさないようにね?」
「はーい」

いい返事をしたティファニーに、此方の問題は解決したところで、また新たな問題。
私の、レギュラス?勘違いした幼馴染みか、実はレギュラス君が最低な奴で二股、もしくは、闇の帝王関連…?うわぁ、面倒臭い。

「カトー、シリウスが好きなんじゃなかったの?」

ジェームズの率直な疑問に、そういえばと私とティファニーもカトーさんを見た。シリウス狙いと見せかけて、兄から徐々に弟にという悪女的恋愛の仕方だったのだろうか。

「シリウスもレギュラスも私のものなのぉ!もちろん、ジェームズもリーマスもルシウスもリドルも!みーんなっ!」


…うわっ。

私も私で、我ながらアレな恋愛してると思ってたけど、これは引いた。ドン引きした。何処の独裁国のお姫様だったんだろう。

「…ごめん、私ちょっと先に教室行くわ」
「…うん、此方こそ付き合わせてごめん、アモ」
「ティファニーのせいじゃないよ。…後で話ぐらいは聞くから」

私にはこれ以上この空間にいるのは無理だ。生理的に受け付けないというか、単純に気持ち悪い。思考が気持ち悪い。
ティファニーには本当に申し訳ないけど、私は先に大広間を出た。…どうせだから、シリウスからもカトーさんの愚痴を聞いてあげよう。相当溜まっているはずだ。


私とシリウスの噂を何処からか聞きつけたカトーさんに絡まれ、思わず私が平手打ちをカトーさんにかますのは、次の日のこと。


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