男主短編 | ナノ




気づけば生まれていた。死んでいないのにもう一度生まれた。所謂生まれ変わり。死んでないけど前世の記憶があるスーパーベイベー。しかもイギリス人になった。最初はイギリス英語理解できない無理怖いという悲しみで赤ん坊の仕事を果たした。
成長するにつれて、まず魔法なんてハイパー非科学が普通にあることに冷や汗を流し、前世で有名だった児童小説にて読んだヴォルデモート、例のあの人やら死喰い人やらが新聞に載っていて魂飛ばした。しかもヴォルデモートさんまだ一回死んでない時代らしくて……ホグワーツ行きたくなくて泣いた。

そんなハリーポッターさんと真逆な俺ですが、運命ってやつは果てしなく残酷なもんで。

「あら、なまえ。こんにちは」
「おうリリーちゃん、こんにちはー」

主人公のお母さんことリリー・エバンスちゃんに、ホグワーツで会った瞬間一目惚れしちゃったんですよねこれが。
あ、はは。だって自己紹介やら組分けまで名前わかんないじゃん?髪と目の色の情報だけで当てろ?無理無理!それじゃあ普通、ジェームズ・ポッターしかわからんて!てか、ハリーのお父さんお母さんが学生時代な年代かよ?!

「なまえー、行こう?」
「ああ…じゃあリリーちゃん、またね」
「ええ」

立ち去っていくリリーちゃんの背中をなるべく見ないように、俺もさっさと一緒に居る女の子ことシンディーと共に歩き出す。
俺はモテる。顔は、まぁ一般水準より若干上?ってぐらいなんだが、精神年齢のせいで一応同い年やら年上の子も甘い目で見ちゃって。落ち着いた優しい人と周りが勝手に良い解釈してくれたらしい。

本命のリリーちゃんとはあんまり話せないんですけどね。
てか、話さないようにしてる。リリーちゃんはあの今日も阿呆やってるジェームズ・ポッターと夫婦になって、ハリー産んで、そんで――

「あーやだやだ」
「なまえ?なぁに、急に」

突然顔を歪め呟いた俺を、シンディーはきょとんと不思議そうに聞いてきた。
シンディーは可愛いと思う。普通に良い子だし、胸でかいし、俺のこと大好きだし。

だけど俺は廊下の窓から外を見て、スネイプを魔法で逆さ吊りにするジェームズ・ポッターに、ああこんな話あったなと思うと同時にどうしようもなく憎らしくなる。本当、アイツ性格悪っ。俺とは相容れねぇわ…同族嫌悪だけど。
リリーちゃんがスネイプを下ろすようにジェームズ・ポッターに怒鳴っていた。

「うわぁ、こっわ…」
「ポッターが悪いだろ」
「まぁそうだけど」

助けたスネイプに暴言を吐かれるリリーちゃんに、俺は今すぐにでも窓から飛び出しそうな自分を振り切りグリフィンドールの談話室に向かった。

「なぁシンディー」
「ん?なまえ、なぁに?」
「俺と賭けしない?」

にっこり笑って問い掛けた俺に、シンディーの顔が赤く染まる。

「いいよ!」
「まだ聞いてないのにいいのかよ」
「なまえは不公平な賭けしないもん!」

にこにこ笑いながら俺に全幅の信頼を向けそんなことを言うシンディーに、苦笑した。
今まさに最低に不公平な賭けを持ち掛けた俺にそれを言うか。

「内容はジェームズ・ポッターとリリーちゃんが付き合うか。シンディーが勝ったらハニーデュークスのチョコ買ってあげる」
「なまえが勝ったら?」

俺は嗤う。

「シンディーが俺と付き合って」

最低最悪の取り引き。俺が勝つこと前提で、リリーちゃんを愛する俺がシンディーを利用すると公言しているようなそれ。

「え?!勝っても付き合いたい…っ!」
「それじゃ賭けになんねぇじゃん。俺はねー、ジェームズ・ポッターとリリーちゃん付き合うと思う」
「なまえの馬鹿…っ!勝つ気ないぃいい!」

涙目で怒鳴るシンディーに、俺は憫笑しながら目を閉じた。
バッカだなぁ…俺は絶対負けねぇんだよ。ジェームズ・ポッターとリリーちゃんは付き合う。そんで結婚して子供産んで、予言のせいで命狙われて、子供を護って死の呪文に貫かれ――

そうして世界は平和になるんだろう
俺のこの、世界からしてみればちっぽけな悲壮と、そんな俺に巻き込まれた可哀想なシンディーと引き換えに。


お題:カカリア様より

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