男主短編 | ナノ




ただ今学園内が春に包まれている。いや、実際は夏なんだが、小指立てる的な意味で花びらが舞っている。
そんな感じで数多くの忍たまが空から降臨した天女様に昏倒する中、俺は天女様を見ることさえ叶わなかった。

「名前には、僕しか要らないよね?」
「イエス、ボス。その通りにございます、雷蔵様」
「だいたい、天女様親衛隊とか馬鹿なの?阿呆なの?死ぬの?親衛隊長やってるのが元親友とか黒歴史なんだけど」
「イエス、ボス。鉢屋は馬鹿で阿呆で死にたいのだと思われます」

恋人が全力ブロックしてきて、天女様の着物の裾さえ見せてもらえないよ!
俺としては、たぶん天女様=同郷の民だからお会いしてみたいのだが。そして色々語りたい。

「名前も天女に盗られたら、僕全体的に殺しちゃいそう」
「衣擦れの音からも全力で逃げることを誓いますっ!」

全体的にの範囲が怖いよ雷蔵さん…!



さて、そんな会話から数日後のある日。
俺はあれ、昨日の夜火薬倉庫の鍵かけたっけ?いやかけた、かけただろ…?え、かけたよな?やばい不安だっ!
といった経緯から、早朝一目散に火薬倉庫に駆けた。ちなみにちゃんと鍵はかかってた。バルス。

「あれ、早いですね」
「お姉さんこそ。おはようございます」
「おはようございます」

気疲れして何も考えずふらふら歩いて帰る途中、事務員のお姉さん(?)に会った。挨拶した。


…いや、だからほらあのね、俺あの人が天女様だなんて知らなかったし、挨拶しかしてないし、浮気もしてないし、雷蔵以外愛してないし――と、言い訳する間もなくそれは起こった。

「とりあえず天女は殺しておいたよ」
「なん…だと…?」

昼間から異様にコアな会話の始まり。やめて、血生臭い。
ちなみに俺はこの時、天女様が愛しの恋人様に殺された理由は俺と挨拶したからなんて露知らず、日頃の鬱憤とかもしくは天女様ったら雷蔵になんかやらかしちゃったのかなぁ程度に考えていたりした。真相を知ったのは約一週間後である。ごめんなさい。

「じゃあ行ってくる」
「え、何処に?」
「全体的に殺しに」

踵を返した雷蔵に、俺は反射的にその肩を掴んだ。雷蔵の目が暗い。とにかく今行かせたら、確実に死人が増えることはわかった。

「俺、天女様に盗られてないじゃん?!」
「…」
「え、何その疑いの目。俺、ものっそい雷蔵らぶなんだけど通じてなかった?俺の愛届いてない?」
「本当に僕だけ?」
「生涯お前だけ」

こうして俺は、今日を血生臭くてグロい悲劇な日でなく恋人とらぶらぶちゅっちゅ愛してるーな日に変えることに成功したのであったー…!
まぁ、雷蔵らぶは事実だし、一つも嘘言ってないけど。

異端者を削除し、を呼び込む
(※ただし本当は削除に意味は無かった)


お題:カカリア様より


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