「ルシウスせんぱーい」
スリザリンの貴公子、マルフォイ家のかの人の名前を呼びながら、俺はホグワーツの廊下を闊歩する。
純血名家の俺のファミリーネームの効力で大体の生徒は道を開けた。それにしても、こんなに名前を呼び続けてもいないって…図書室?
「みよじ…お前は黙って人を捜せないのか」
「あ、ルシウスせんぱーい!いやぁ、こうやって捜した方が都合がいいもので!」
「お前はな」
疲れ半分呆れ半分で俺を見るルシウス先輩ににこにこと悪びれることなく笑って、俺はすぐに駆け寄った。
俺が頑張らなくてもルシウス先輩の名前を呼ぶだけで、知らない奴がなまえさんが捜してる、なんてルシウス先輩を捜して駆け回ってくれたりするわけで。せっかくだから有効活用してやらないと。
「それで何の用だ」
「あ、そうそう!あんまり大きい声じゃ言えないんですけどー…」
俺は言葉を濁し、ルシウス先輩との距離を一気に詰めてその耳元に口を寄せた。
「俺も死喰い人になったんですよー!これからもよろしくお願いします」
名残惜しくもルシウス先輩から離れれば、ルシウス先輩は眉を寄せて俺を見ていた。あ、ヤバい。近づきすぎた…?
「それだけか?」
「あ、う、はい」
「なら私はもう行く」
「ぅええ?!ちょ、待ちましょうよ!親睦を深めましょうよー!」
踵を返しさっさと去ろうとしたルシウス先輩に、腕を掴み必死にアピールする。さすがルシウス先輩、冷たい!俺が勝手にその青い目をアイスブルーの瞳と称するだけはある!凍りそう!
「みよじ、お前何が狙いだ」
急に真剣な表情で振り返ったルシウス先輩に、俺も真剣な表情を作りつつも心中はきゅんきゅんだった。
俺は一つ咳払いをし、俺ができる最大級、限界の笑顔を浮かべる。
「できれば名前で呼んでもらえたらなー、なんて?俺の名前知ってます?なまえですよ、なまえ」
俺は照れながらも、ルシウス先輩の無表情な顔を伺うように見た。
「…」
「え、ちょっとルシウス先輩、何でまた何も言わずに去ろうとするんですか」
「…」
「あれですか、私の記憶力を嘗めるな。お前の名前ぐらい知っているに決まっているだろうが。貴様は馬鹿かってことですか?」
「最後だけ合っているな。付いてくるな」
「えぇえ?!地の果てまで付いて行きますー…!!」
お題:
花洩様より