男主短編 | ナノ




※現パロ





俺にはね、果てしない後悔があるんですよ。だから死んで転生して日々を過ごして、なのになのに未だに忘れられない想いがあるんですよ。

また会えるわけないのに。

でも俺って今まで約束破ったことなくて、だからまだ捜してる。俺は別に、アイツが好きとか、そういうのじゃ…全然、そう全然なくて、ただ単に約束果たしてないから、だからまだ、捜してる。


「たち、ばな…?」

だから、だからだからだから、アイツの、あのサラスト一位の長い黒髪は綺麗なのは変わらずとも短髪だったし、服装は遠くの高校のものだった気がするけど、それでも後ろ姿だけで立花だってわかったのも、思わず涙溢れたのも全部、所詮約束のため、ってことにしといてください。

「ん?…誰だ?」
「は?」

その時俺は、振り返った彼の顔は寸分変わらず記憶のままの立花だったのに、人違いだったのかと思った。
だって、おいお前、自分が言ったことには責任持てよ。お前は、俺のこと覚えてなきゃいけないだろうがよ。俺に言う台詞、間違ってんだろ?

俺は今まで、何のために――

「誰でも、ねぇよ。誰でも」

お前に認識されなきゃ、名乗ったって意味がない。約束も全部、意味がない。

そりゃね、俺が悪かったよ。前世の間じゃ約束守れなかったし、破ったも同然ですとも。
お前が俺を好きだったくせに。俺が何も言わなくてもしなくてもお前がその百倍口説いてきて、そのくせ俺が些細なくだらないことしただけで真っ赤になったくせに。
俺がせっかく、約束守りに来てやったのに、やめだやめ。

「だが、私の名前を呼んだだろう?それに、」
「同じ名前のそっくりさんだったみたいだ。気にしないで。おま…アナタ、は知らなくていいんですよ」

俺が微笑むと、立花なのに立花じゃない男は、酷く動揺したように俺を見ていた。そりゃ、いきなり自分の名前を知らない男が呼んで、しかも泣いてたら気になるよなぁ。
別にね、今の立花は俺のことなんて知らなくていいと思うんだよ。だって俺、多分立花にトラウマ植え付けただろうし。約束…破ったし。
俺のこと知らなくても、知らなかった方が幸せに生きられるんじゃねぇの?今世じゃ前世より、世間は衆道に理解ないしね。

「気にするなという方が、無理だろう…」
「じゃあ二、三日気にしてそれからは忘れてよ」

無理矢理笑顔で話を断ち切り、立花に背を向けた。呼び止められたけど、気にせず足早にその場を去った。

あーあ、何で俺こんなに泣いてんだよ。格好悪っ。今世に生まれて十云年…気にしすぎたんだよ。立花なんて、現に綺麗に忘れてんじゃん。

「バッカみてぇ…」




作法室でいつも通り惰性にも寝転んでいると、い組の方も実習が終わったらしく立花が作法室に来た。

「おかえり、立花」
「仙蔵でいいと言っているだろうが」

なんて言いながら、やはりいつものように寝転がる俺に馬乗りになろうとする立花に、直ぐ様起き上がり距離をとった。

「何だ、好きにしていいのかと思ったのだが」
「なぁんでお前は、人が寝転んでるとそういうことするかねぇ…?」

常日頃からの立花の、対象を俺に限定したこの変態行為に呆れ返り、意識して全身で呆れを表現しながら言えば、立花は座り目線を俺に合わせた。

「名前が好きだからな」
「…はいはい」

俺はふぅ、とため息を吐きながら立花から視線を逸らし、軽く流した。
この綺麗な顔に、恋愛の意味での好きを言われるのにもいい加減慣れた。最初は無駄に慌てていたけど、軽く流せばそれで終わりだとわかればそれからは…いつからだっけ。三年の終わりぐらいから六年の今まで、ずっとこの微妙な関係のまま。

「おい名前、聞け」
「んー?まだ何か?委員会のこ…と…?」

立花の方を見れば、今までに見たことがない程真剣な顔をしていて、思わず息を止める。

「好きだ」
「…さっき、聞い、たよ」
「愛してる」
「な、なぁ…もうやめよう?な?」

目はせわしなく動き回るし、声は震えるし、汗が大量に流れた。いつもと同じこと言われてんのに、なに。なんだこれ。
俺、忍者向いてないかも、な。

「毎年、このぐらいの時期に一人は仲間の中で死人が出る忍務が入る。…名前、明日の忍務はキツイらしい」
「未練なくそうって…?立花、それ死にに行くようなもんだよ。やめようぜ?」
「違う。…だから、未練を作ろう」

不吉な発言に動揺を隠しきれないまま少し怒れば、立花は冷静に俺の言葉を否定し、思ってもみなかったことを言った。俺は意味もわからず、立花の次の言葉を待った。

「忍務が終わったら、告白の返事を聞かせてくれ」
「…あのなぁ。それ、俺も好きだって前提じゃねぇか」
「いや?そろそろ私も前に進みたいからな。名前の返事がいいものに越したことはないが…どちらにせよ、聞けなくては一生前にも進めん。だから、」
「はいはい、俺もちゃんと答えに忍術学園に帰って来ますよ。約束」





「マジで一生で終わってんじゃねぇかよ。聞けよ。言わせろよ」



所詮、お前にとっては前世での約束かよ…。


お題、画像:その一瞬のために死ね様より



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