僕は最も苦手な人間は誰かと聞かれたら、迷わず七松小平太を挙げる。
「名前ーッ!どこだぁあああ?!」
七松の声に肩を跳ねらせ、僕は瞬時に木の上まで跳び上がり気配を消した。
何故か僕を気に入り追い掛け回してくる七松のお陰で、僕の隠密能力は非常に高い。本気でやったら先生にさえ中々見つからないよ、はは。一応言うけど、これ皮肉だから。
僕は力があまりないため、この忍術学園において生き残るため、七松とはまったく別の方面に努力した。僕は戦術と隠密が得意だ。だから七松とは組が違うこともあり、もう一ヶ月は会っていない。上出来だ。
「名前、やっと見つけたぞ」
「ぅおわっ!仙蔵か!七松かと思ったー…」
「ああ、今日もまたかくれんぼか」
「そんなとこ」
かくれんぼと言うには、少々真剣過ぎるけどね。
木の下にいる仙蔵に、それで何か用かと視線を送ると、綺麗な笑みを返された。
「ふと、今日もちゃんと逃げ切れているか気になってな」
「仙蔵さん、性格悪いッス。七松に本気で抱き着かれたら、僕の背骨なんて軽くぽきっなんだからな?」
真剣に訴えてみるも、仙蔵のそのさも愉快だというような表情は変わらない。
「愛を感じるじゃないか」
「他人事だと思って…」
「お前達の攻防を見るのは中々楽しいぞ?」
「うわぁ…本当に他人事だ」
僕と七松の、七松に悪意はないんだろうが命懸けのやり取りになんて奴だと睨む。すると、何故か仙蔵はまったく仕方ないなと言わんばかりにため息を吐いた。
「仕方ない、少し関わってやろう」
「うん?」
「小平太、此処に名前がいるぞ!」
「ぎにゃあぁあああ!仙蔵の馬鹿ぁああ!裏切り者ぉおおおおお!」
此処からでも砂煙が近づくのが見えて、僕は叫びながら瞬時に木を下りて走り出した。
今度仙蔵の部屋にある私物ぬるぬるのぺたぺたにしてやるからな?!
走り出して数分。当然力もなければ体力も多い方じゃない僕が七松に命懸けのおいかけっこで勝てるはずもなく、呆気なく首をホールドされた。
七松さん絞まってます…っ!降参!諦めの悪い僕が悪かった!だから離して…!
「名前!好きだ、愛してる、結婚しよう!」
「っ…こと、わ、る…!」
「いや、私が名前を愛してるんだから、名前だって私を愛する!さぁ、結婚するぞ!いけいけどんどーん!」
「こと、わ…」
意識を失う間際、一年生の頃の七松を思い出した。あの頃はかわいかったんだ…あの頃は…。
今もきっと、加減がちょっとアレなだけで悪い奴ではないんだろう。だけどそう、このままでは僕は七松に殺される。だから、
壁とか距離とか そういうのが欲しい切実に。
お題:
花洩様より
10000打リクA:小平太に攻められる男主(愛様に贈呈)