男主短編 | ナノ




※シリウス成り代わり





一目見たその時から、俺がシリウス・ブラックであるということには一切関係なく、俺はジェームズ・ポッターという人間にどうしようもなく惹かれた。
この気持ちが恋かと聞かれれば、それをも含む強大な憧れ、羨望、そして何より精神的服従と答えよう。


「シリウス!」

ジェームズが笑顔で俺を呼んだのに、手を上げて応える。
そこにジェームズがいるだけで、俺の世界は色づき華やいだ。他にいくら大切なものができても、それは俺の世界にジェームズが存在していることで初めて成り立っていた。

「リリーがさっき、初めて挨拶を返してくれたんだ…っ!」
「へぇ、よかったじゃん」

興奮をそのままに俺の背中を痛いぐらいに叩くジェームズの手を無理矢理掴んでやめさせ、口元を吊り上げ淡白に言葉を返す。
俺は正直、リリー・エバンスが嫌いだ。嫉妬かと言われれば否定できない。だが、俺はジェームズに好かれながらそれを拒否するエバンスを到底好きにはなれなかった。最初からエバンスがジェームズを受け入れていたとするなら話は別だったんだが。

「気持ちが込もってないんだよ!」
「んなもん込めて堪るか」
「まったく、シリウスはそんなんだからハッフルパフの子にフラれるんだよ」
「あんな女どうでもいい」

もう名前も忘れた一時期付き合っていたハッフルパフの女を思い出し、苛立ちが込み上げた。
そいつに告白された時は、まぁかわいいし適当に付き合った。だが頭に乗ったあの馬鹿は、あろうことかジェームズを貶しやがった。スネイプ?あんな奴どうでもいいだろうが。ジェームズを、貶した。その事実だけで俺には十分だった。

「いつか刺されても、僕は助けないよ?」

呆れたように言ったジェームズに、全身が凍りついた。

ジェームズに、見放される…?
待って。待ってくれ。俺が悪かったなら謝るから。だから見放さないでくれ!見捨てんなよッ!

ジェームズに見放されたら、俺は呼吸もできやしない。


「嘘だよ」

ジェームズは笑った。それだけで俺は救われた。

俺にとってジェームズ・ポッターとは、神だった。


お題:空を飛ぶ5つの方法様より


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