男主短編 | ナノ




俺は質の悪い男だと思う。俺に惚れられたアイツは可哀想に。
…なんて、思ってもいねぇくせに!


「リリー、元気?」
「たった今、アナタのせいで最悪な気分だわ」
「ああ、元気そうで何よりだ」

中庭で本を読んでいたリリーに声をかければ、嫌悪感むき出しで睨まれた。
もちろんそんなことで俺の心が傷つくはずもなく、むしろ機嫌良く笑みを強めた。リリーはそんな俺の反応に悔しげに俺から目を逸らし、本に没頭するふりを始めた。かわいい抵抗だなぁ。

「リリー?」
「…」
「お前、俺のこと嫌い?」
「当たり前よ」
「やっぱ聞こえてんじゃん」

俺が本心はともあれ邪気のない笑顔で言えば、リリーは苦虫を噛み潰したような顔で黙り込んだ。

「てか、その態度俺が好きだからだろ?」
「はぁ?頭おかしいんじゃないの?」
「じゃあ俺の何が嫌いなんだ?言えるだろ?」
「っ…」

ほら、言えない。
ここで大笑いしようものならリリーが逃げ出すのは目に見えているため、俺は口元に手をやり何とか笑いを抑え込んだ。
だいたい、リリーの俺の嫌いなとこなんて、俺が好きなこと前提なもんしかないに決まってんだろ。

「ツンデレは二次元でもない限り一部のマニアにしかウケねぇぞ」
「煩い」
「てか、俺が嫌い」

終始笑顔のまま言い放てば、さっきの勢いはどこへやら、リリーは悔しげに視線を逸らし逃げようとした。こういうところがかわいいんだよな。
まぁ、このまま逃がしてやる程優しい性格してねぇんだけど。

俺は中途半端に腰を浮かせた状態のリリーの腕を無理矢理引っ張り転ばせた。引っ張ったんだから当然リリーは俺の方に倒れて来るわけで、小さく悲鳴を上げるリリーを俺は優しく抱き留めてやった。
そんな時、俺は目の前のリリーより視界の隅を気にしてんだから本当嫌な奴。

「は、なして…ッ!」
「はい、どうぞ?」

背中に回していた腕をほどき、俺はあっさりとリリーを解放した。リリーは俺をしかめっ面で黙って数秒見た後、力が抜けたように俺の胸に身体を預けた。

「…なまえは、狡い」
「うん、知ってる」
「っ好きになんて、なりたくなかった!」

半ば叫ぶように、泣きそうな声で言ったリリーに、俺はリリーの方を見ないまま抱き締めた。

俺の最低なとこはどこかって、好きな奴はリリーじゃなく別の奴ってとこだな。


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