「左近ー」
ひょこっと廊下の影から顔を出し名を呼んだ俺に、左近はびくりと肩を跳ねらせた。それから誤魔化すように顰めっ面で俺を睨む。何この子可愛い。
「何ですか」
「おいでおいでー」
「行きません」
「お煎餅あげるよー」
「絶対に行きません」
とは言いつつも、俺がいるのが進行方向だから通らないわけにもいかず、俺を警戒しながら立ち止まっている左近おいしいですもぐもぐ。
俺が笑顔で手招きを続け左近が俺を睨むという、端から見れば何だかよくわからない、しいて言うなら警戒心の強い猫と猫好きの図を続けていると、俺と左近の間を久々知が通った。
「名前先輩、何やってるんですか?」
「左近に卑猥なこと、主にピーやピーをしようと…」
「教育上良くないので黙っていなくなってください」
白い目で見られ、俺は大きく舌打ちをした。お前の意見なんて聞いてねぇんだよ豆腐がっ!俺の性対象は一年から三年の後輩だ!お前になど興味ないわ年増!よぼよぼ豆腐っ!高野豆腐っ!
「何となく不愉快なことを思われた気がします」
「気のせいだ」
俺が視線を逸らすと、服の袖を引かれた。何だ豆腐、貴様俺に戦いを挑む気か…?いいだろう、貴様は俺の性対象に入らんが特別に揉みしだいてくれるわ…っ!まぁ何処を、かは口には出さんがな!
「名前先輩、食いっぱぐれるので行きますよ」
「ぎゃんっ!左近!自分から近寄って来たってことはピーしてい「黙れ」
俺を一睨みしさっさか前を歩いて行ってしまった左近を追う。え、久々知?豆腐なんて知らん!
尺の違いから簡単に追いついた。
「左近は今日もかわいーなー!」
「尻を揉むな…っ!」
無理矢理左近のかわゆいお尻から手を離され、俺はやむなく代わりに左近と手を繋いだ。誤解をして欲しくないんだが、俺は左近と手を繋ぐのは好きだ。しかしそれよりもっと尻を揉む方が好きなだけだ!
「名前先輩って交友関係広いですよね」
「うん?まぁそこそこ」
「名前先輩って変態で馬鹿でどうしようもない人間のクズですよね」
「?!いきなりの酷い罵倒!」
何の前触れもなくかつてない程の酷い言われように、俺はちょっと真剣に考えた。
何が悪かったんだ…尻を揉むのは初めてじゃない。いや、積もり積もった鬱憤が爆発したという畏れも…ち、違う!きっと左近は腹が減ってイラッときただけだ!そんな俺を嫌いになったわけが、な、ないぞ?!
「名前先輩みたいな変態に付き合ってあげるのなんて僕ぐらいですから、感謝してください」
「もちろん」
…あれ?もしかして久々知に焼き餅焼いた、とか?
「……ご飯より左近を食べてもいいですか」
「駄目です」
即答だった。
今日も俺と左近は正しく恋人同士だ。