男主短編 | ナノ




それはたったの一時間二分十六秒間の出来事であった続編



俺は極一般的な隠れオタクだ。
ただ幼馴染みに薔薇から百合からCPから夢小説まで愛する、見た目天使中身酷い変態がいるせいで、意図せずそっち系の色んな知識もある。
しかも先日、その中のおそらく薔薇に分類されてしまう非常に濃い白昼夢を見るという謎の体験をし、そっちの道に目覚めかけた。
うん、だから俺は図太い。そうそう驚きはしない。


「…ワッツ?」

朝起きてパジャマのまま顔洗ったり歯磨いたりする為に部屋から出たら、部屋の外が外国でした。

完全に許容外です、本当にありがとうございます。

トリップという言葉が頭を過った。
どうしよう、このおかしな状況、それしか説明出来ない気がす……あれ、此処の人達の妙に彫りの深い顔立ち、何処と無く見覚えが。何故だ?俺にはそんな知り合いは、知り合い……

居る!
前に白昼夢で見た外国人さんがこんな感じの顔立ちだったつまりこれはまたもや俺の白昼夢でありもちろん現実ではない!OK、把握した!

「む?!」

俺がなんだ夢か、ならいいかと街でも見て回ろうと思った時、突如何か事件を思わせる驚愕の声を聞いた。
俺が声の主を見ようと振り返ると、目が合う。

「あっ!あ、あ、あーっ!!外国人さん?!わー、また会いましたね、久しぶり?」

白昼夢でまた会うって俺どんだけこの人の事気に入ってたんだよと思わなくもないが、とりあえず一応は知り合いに会った俺はテンションを上げて外国人さんに寄って行った。

「平たい顔の民族、何故此処に…?それもこの国の言葉を使いこなしているとは…やはり、奴隷階級で居ながらその知恵は我等より…」
「あはは、何故か言葉通じてんのに話は全く通じない!」

俺はいつから奴隷階級になった。平たい顔の民族って何だ、侮辱か?侮辱されてるのか?

「いや、だが話が通じるのは都合が良い」
「そうね、俺もリンスは髪につけるもんだってちゃんと言葉で伝えられんの嬉しい」

あの時勝手に舐めた癖にくわっとした外国人さんの顔、結構怖かったし。
外国人さんは何かを考えるように俺をじっと見る。特にする事もない為、俺も外国人さんを見返した。

「平たい顔の民族、私は今あまり時間が無い」
「え、そうなんですか?そりゃ残念」

いや、むしろ幸運だったのかもしれない。だって外国人さんやっぱりイケメンだし、今は言葉も通じるし、やっと忘れられそうだったのにまたも白昼夢に恋してたまるか。

「貴様、これから予定はあるか?」
「無いけど」
「ならば共に来い」
「へ?!」

いきなり腕を引かれて胸からどきんと音がしたが、それはいきなり腕を引かれて驚いたのであって触れられてる部分が熱く感じるだなんてそんなまさかあはははは。
落ち着け俺、深呼吸いやラマーズ法だ。ひっひっふー。

「私は今、ローマ皇帝に呼ばれている」
「ローマ皇帝?!は?!マジで?!ドッキリじゃなく?!」
「ああ。私は浴場専門の建築技師だ。今のローマ皇帝は今までに無い発想の風呂を所望する方でな。よって、貴様の民族のような風呂造りに精通した人間が協力してくれると有難い。当然、礼はしよう」

どうしよう、まったく意味が解らないよ。とりあえず俺は何故風呂造りに精通した民族だと思われているんだよ。
そして俺の白昼夢なのに、此処俺の知ってるローマと違うんだがこれ如何に。

「あのー…もういいや、諦めます。でも俺、平たい顔の民族じゃなく名前って名前あるんで、そっちで呼んでください」
「そうか、わかった。私はルシウス。ルシウス・モデストゥスだ」

やったー、外国人さんの名前を俺は脳内にインプットした、何かのレベルが上がった!そんなレベルは粉々に砕け散ってしまえ!

未だにこれは夢だと思っているために何処か事を楽観視している俺は、既に壮大なドラマが始まってしまっている事に気づいていなかった。


200000打お礼フリリク、冬椿様へ


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