助からない続編
目を覚まして直後、俺は吐いた。
前の名前の死に方が酷過ぎて、頬に飛んで来た名前の血肉がまだついている気がして、怖かった。
その日は、俺が布団から動けないうちに名前が死んで、また最初に戻った。
「名前、おはよう」
「おは、よ…?うわ!兵助なんで俺の部屋にいんの?!」
いつもの、一言一句表情一つ変わらないやり取りを繰り返した俺と名前。
布団から上半身を起こした態勢なのに半分しか目が開いていない名前に、俺はへらりと笑みを浮かべた。何故か、名前は目を見開く。
「名前ー、一緒に来て?」
「え…あの、いや、眠い」
「眠い眠いって、そんなに死にたいの?俺は死んで欲しくないよ。好きだよ、大好きだよ、愛してんだよ、お前だけなんだよ。わかんない?名前はまだわかんないかな?!」
「え、えっと…へ、兵助さん…?」
引き攣った顔で、詰め寄る俺から後ろに這って離れる名前。壁まで追い詰めた俺は名前の頭を両手で包み込んで、訳が解らないと怯える名前に視線を合わせる。
「兵、助…よくわからんが、とりあえず落ち着こう」
「落ち着いてる」
そう真顔で言って、名前ごと喰らうぐらいの気持ちでその唇に食らいついた。
目を開けたままの俺は、名前が目を見開きそれから頬に赤が差すまでその全てをじっと目に焼き付ける。
逃げる舌を追って、絡めて、吸って、名前の唾液を飲んで、代わりに俺の唾液を名前に送って、いっぱいいっぱいの名前が真っ赤な顔で飲み込んだのを見届けてから俺は唇を離した。
二人の口と口を透明な糸が繋いでいて、俺はそれが切れるより先に自分の舌で舐めとった。
俺のその行動に、ぼんやりとしていた名前は我に返ったらしくはっとして、後ろが壁なのも忘れたのか何とか俺から離れようとして壁に後頭部を強打し、頭を抱えた。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃない色々大丈夫じゃないむしろ兵助が大丈夫じゃない」
頭を抱え蹲ったような態勢のまま、耳を真っ赤にしながら話す名前に、俺は名前の全身を包み込むように抱き締めた。名前がびくりと肩を震わせる。
「うん、俺、大丈夫じゃない」
少し、沈黙が流れた。
名前は顔を上げ、揺れる瞳で俺を見る。それから口を開き、閉じ、また開く。
「…ずっと、言いたかった事があるんだ」
「ん?何?」
優しく促せば、名前は泣きそうな顔をした。
「…いい加減、俺を助けるの諦めて、幸せになれよ」
その言葉は、その意味は、つまり、と俺の頭が答えを導き出したけど、俺は満面の笑みを名前に向けた。
「嫌だよ」
名前の目から零れた涙を舐めとった。
名前は俺の背中に手を回して、声も上げずに泣いた。
「大丈夫、名前、ほら俺と一緒に二人だけで暮らそう」
「っお前は大丈夫じゃないくせに、よく言う」
「うん」
それから、二人並んで学園を走って抜け出した。名前の死を避けていた頃の俺にはそんな危険を冒すなんて考えられなかったけど、だって、ほら、どうせ名前が死んでもやり直しだし。名前、記憶あるし。だいじょーぶ。
山小屋を見つけたらすぐ中に入って、繋いだ手を無理矢理引っ張って名前を押し倒した。
「名前、名前、」
名前をひたすら呼びながら、着物のはだけたその首に顔を埋めて印をつけて、ああ、どうせやり直したら消えちゃうだろうけど、またつけるから。
「はは、兵助、これ俺犯されてるみたい」
「犯したい」
「あはは」
笑った名前も、俺のその言葉が冗談じゃない事ぐらい当然気づいてるだろうけど、抵抗もせずに俺に身を任せていた。
「今日、名前が死ななかったらもう一生名前を此処から出さない」
「俺、多分死ぬよ?そーゆー運命みたいだから」
「だったら、成功するまで何度だって此処に来て何度だって愛し合おう」
褌を解いて、名前の陰茎を口に含む。
名前は微かに喘ぎながら、泣きそうな顔で笑った。
「っん、ぁ…はは、狂ってる」
「うん、愛してる」
結局その後名前は死んで、その次も死んで、その次も死んで、その次も死んで、その次も死んで、その次もその次もその次もその次もその次もその次もその次もその次もその次もその次もその次もその次もその次も、死んだけど、やり直す度に俺と名前は愛し合えるから俺はしあわせです。
シアワセデス。
200000打お礼フリリク、柊ユウキ様へ