僕はレギュラス君の親友であると思う。たぶん。
「でもレギュラス君に僕、実はバイセクシャルで男もイケる口なんだ!とか話したら友情に亀裂が入る気がする」
たぶん。
「他の奴の話すんな」
口を手で塞がれ、ベッドの上で座っていた僕はそのままその手で乱暴にまたベッドに倒された。必然的に、ベッドで横になっているシリウスと顔が近くなり、その無駄に程端正な顔が目に入る。
「弟じゃん」
「弟でも」
不満そうに僕を見るシリウスに、仕方ないと僕の方が折れ、その引き締まった身体に抱き着いた。
「シリウスもさぁ、せっかくモテるのに僕一筋とか…当事者ながら勿体ねー」
僕が呆れながら言うのに、シリウスは煩いとでも言うように首から肩への境界線辺りに噛みついてきた。
ちくしょー、痛ぇなクソわんこ。これは血出たぞ。
「なら、せっかくモテる俺がお前だけだって言ってんのによそ見してんじゃねぇよ」
馬鹿。
そのわかりやすい嫉妬の意味が、僕のレギュラス君への友情に対してならとても可愛らしい問題なのだけど…残念ながら可愛らしいのはシリウスとレギュラス君だけで、僕は可愛くない。よって、そういう意味じゃない。
「ごめんね?まだ誰かのモノになる気ないから」
笑いながら、オトモダチの一人であるシリウスの頬に自分の首から出血させられた血をつけてやった。
でもそれに目を細めて血舐めるシリウスも大概…あれ、これ可愛いか?モロで猛獣じゃないか?まぁ、僕に頭上がらないからやっぱり可愛いもんだ。
…ん?僕って猛獣使い?
「どうやったら俺のになるんだよ」
「えー…別にシリウスも浮気していいよ?」
「そうじゃなくて、」
「シリウスは、僕のモノなの…イヤ?」
シリウスが自分をどうしようもなく好きなのを知りながらあざとく首を傾げたのに、そんなこと気づいていないらしいシリウスはうっすらと顔を赤くした。
「ご、誤魔化されねぇし…っ!」
「っふふ…!そう、じゃあえっちなことして誤魔化すしか、ないか」
「な、もう誤魔化すって言ってんじゃねえかよ!」
きゃんきゃん煩いシリウスに、唇塞いでやろうかと考えてから、ふといつしか誰かに聞いたキスをする箇所に纏わるその意味を思い出す。
唇が愛情、頬が厚意、ええと手の甲が尊敬?そうだな後は――
「シリウス、ちょっと後ろ向いて?」
「は?何だよ、急に」
「いいから」
シリウスからしたら話をぶった切って頼む僕に、訝しげにしながらも背中を向けてくれた。僕はその背に淡く微笑み、もぞもぞと広いベッドの足下側に移動する。
そして、
「ぅあっ!お、おい!ど、こにキスして…っ!」
その腰に優しく口づけた僕に、シリウスが真っ赤な顔で勢い良く身体を反転させた。僕としてはその際軽く骨盤に顔をぶつけられて痛かった。このやろー。
「腰にキスする意味、知らないの?」
「意味…?」
「そう。腰はね、束縛のキスなんだよ。僕はシリウスのモノじゃないけど、シリウスは僕のモノになっていーよ」
「…ざけんな」
「まあまあそんなこと言って、」
そこで一度言葉を切り、シリウスの上に覆い被さって妖艶な顔を作る。惚けたように一心に僕の顔を見るシリウスの耳に自分の口を近づけ、一言言った。
満更でもないんでしょう?シリウスって、本当僕のこと好きだよねー。
企画:
懶惰様提出