男主短編 | ナノ




俺は最低最悪で性格破綻した、この世の害悪だと思う。まぁ、だからと言って直す気ないし、ましてや死んでやるなんてもっての外。
そんな俺は、俺以外の奴等全員が可哀想なことに、大変お綺麗な顔で生まれた。
それによって交友関係は色んな方向で豊富となり、最低な感じにさらに力がついた。

つまり、俺はある程度思い通りに女の子引っ掻けて最低なことができるようになったわけだ。

そうして、俺はとあるこれまた最低最悪な理由により、リリー・エバンスに目をつけた。
これはそんな俺の秘密の企みのお話。


「リリー」

口づける時、ふと目を開ければ赤く色づいた綺麗な顔。思わず目だけで笑った。
美醜に対しては煩い方だが、リリーはかなり綺麗な子だと思う。

ん…?じゃあお前の中身の美醜にも気をかけろ?んなもん外から見えないじゃん。気にすんなー。

「なまえ」
「ん?」
「…すき」
「はは、知ってる」

弛みきった顔で精一杯に愛を伝えてくるリリーに、これは普通の男なら絆されて当初の目的捨てただろうなと、意味のないことを考えながら、顔は笑顔で応える。
第一段階はリリーを落とす、第二段階でどろどろに惚れさせる、第三段階で――。だってね、だから俺はリリーを選んだ。
この子さ、自分の目で見たものしか信じないらしいよ?はは、一見大層お綺麗ですけど、俺から言わせりゃそれ、騙されやすい子の典型デスヨ?


愛してる?

くだらない。

「リリー、ごめん。ちょっと急用できた。すぐ戻るから」
「あ、うん。待ってる!」

最初は見せていた強気な態度も、今ではすっかり抜け落ちた。俺好みに調教されちゃってまぁ…たーのしーぃ。
スリザリンの部屋を出て、向かう先はグリフィンドールの談話室。各寮に俺に心酔してるセフレがいると、色々便利だ。すんなり談話室に入れてもらえた。
セフレが他に気づかれないようすぐ何処かに行くのを横目に、俺はさっさと目的の人物に近づいた。

「ポッター!」
「みよじ…?何で此処に」

わかりやすい嫌悪の視線も、もう慣れっこで毛ほども痛くない。ああでもブラックはいなくてよかったかな?アイツいきなり杖振ってくるから騒ぎになる。俺、面倒事は勘弁。

「リリーの話」
「優越感に浸りたいわけ?」
「えー、お前にいい話なのに。まぁ俺の良心そんなにないから、断るんならいいや。帰る」
「…おい!」

慌てて引き留められた。ポッターって、こういう言い回しに弱いよな。悪いが人の心理読むのは俺の得意分野なんだよ。

「場所変えるぞ?」
「…わかった」

未だ視線で嫌悪を伝えてくるポッターと一緒に、人気のない廊下に来た。

「リリーと別れようと思って。後はお前、好きにすれば?」
「…は?」
「じゃ、そういうことだから」

淡白に立ち去ろうとした俺の腕を、ポッターが掴んだ。俺はため息混じりに振り返る。

「お、おい!理由は?!」
「飽きた」
「ッお、前…!」

ポッターが見てる此方が痛いぐらい拳を握り締めて腕を振りかぶった。
あらら、暴力は良くないよー。てか、この場で注意力散漫な俺も俺だけど、ドラマ並のタイミングの良さだな。

「ポッター…!アナタ、なまえに何してるのよ…っ!」
「っリリー…」

ポッターは振り上げた拳を力なく落とした。肩で息を切らすリリーに、俺は冷めた目を向ける。

「俺は、待ってろって言ったけど?」
「ぁ、そ、それは、でも…!」
「言うこと聞けない子は、きらい」

笑顔で言った俺に、リリーの顔が真っ青になる。
それなりに、リリーには時間かけて依存させたからな。俺の一言で結末まで悟ったんだろう。

「おい、リリーはお前を庇って…ッ!」
「だから?お前には言っただろうが」
「っ」

言葉を無くしたらしいポッターを一瞥して、俺はリリーを見た。リリーの顔が絶望に染まっているのを見て、笑う。
リリーは俺の笑顔に安堵の表情を浮かべた。俺は笑顔のまま、

「俺とリリー、今日で終わり。じゃあな」

そう言ってリリーの横を歩いて通りすぎた。

「終わる、なんて…っ言わないで」

背後から涙声で聞こえたその一言を、俺は非情にも黙殺し、次のターゲットは誰にしようかなんて最低なことを考えた。


優越感に浸りたかったのかって?
俺がそんなまともな人間に見えます?

ただ、俺が介入しなければ幸せになれただろう男女を、ぐちゃぐちゃに掻き回したかった。ソレダケ。


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