男主短編 | ナノ




俺は極一般的な隠れオタクだ。
ただ幼馴染みに薔薇から百合からCPから夢小説まで愛する、見た目天使中身酷い変態がいるせいで、意図せずそっち系の色んな知識もある。
うん、だから俺は図太い。そうそう驚きはしない。


「……」

でも自宅の風呂に入ろうとしたら、彫りの深い顔立ちの360度何処から見ても外国人ですなお兄さんが、どう考えてもそんなスペース無かったのに浴槽からこんにちは。

完全に許容外です、本当にありがとうございます。

一瞬逆トリップという言葉が頭を過ったけど、少なくとも俺はこの人知らないし登場の仕方意味わからんので何も考えなかったことにします。
外国人さん、なんか母さんと姉ちゃんが使っていると思われる泡立ちネットを凝視しているんだが、どうすればいい。俺のとるべき正しい行動って何?警察とか?ご立派なものを見るとなんか自分と比べてへこむから隠すようお願いするとか?
はっ…!そうだ、まずは話し合いだ!日本語通じるだろうか。

「あの、」
『これは何に使うのだ』

言語が英語ですらねぇえええ!しかも何処となく聞き覚えのあるフランスとかその辺の雰囲気でもねぇ…!泡立ちネット持ちながら何か言ってるけど何一つ聞き取れねぇ!
ま、待て待つんだ俺もちつけ。英語!俺の大の苦手な公用語様でリトライだ!イケるはず…!レッツチャレンジ!

「ゆ、ユアネーム…?」
『?』

無理でしたぁあああ!もう思いっきり首傾げられましたぁあああ!
そして何故か泡立ちネット渡された!俺に異国間交友能力は無い…!両親旅行中だし…姉ちゃん!弟のピンチです!彼氏さんとの愛の時間を早めに切り上げて帰ってきてお願い…っ!

「と、とりあえず泡立ててみまし…っおぅお?!」
『こ、これは…!』

自棄になって姉ちゃん達がやってるみたいに洗顔を泡立ててみたら、外国人さんが目を輝かせて凄い勢いで詰め寄ってきた。
ちくしょー!よく見たらイケメンだし、不覚にもどきっとしたじゃねぇか!

『平たい顔の民族、この泡をどうするのだ?』
「え、えっと、」

よくわからないけどニュアンス的にたぶん何かを聞かれている…っ!そして詰め寄って来ないでぇええ!お互い裸だから、なんかもっ、俺そっちの道には目覚めたくないのぉおおお…!幼馴染みの変態に、名前君私生BL見たいな(はぁと)と一時期一日五回は言われても逃げ切ったのぉおおお!お願いだから水の泡にしないでぇえええ!
そ、そそそうだ!我等人間には言葉が通じずともジェスチャーという画期的な意思表示があるではないかっ!!

「てりゃあぁああ!」
『うっ…!な、何をするッ!』

いやぁああああ!怒っていらっしゃる!俺の渾身の泡々洗顔を顔につける行為で怒っていらっしゃる…!目の周りとかは避けたしそんな怒ることな、…ん?も、もしやこの人――

「こ、これは顔につけて、その、肌を綺麗にするもの?で」
『何…?!貴様等はこれを顔につけるのか?!』

お、おお…!なんか俺の顔にもつけたらオーバーリアクションで驚いたぞっ!
こ、これはやっぱり!この人洗顔知らなかっただけだよ!なんだ良かった!

「えっと、ある程度時間経ったら流します。ぬるま湯がいいとか言ってたような?」
『洗い流せばいいのだな』

何故俺は今、自分の家の風呂場で初対面の外国人に洗顔講座なんてしているのだろう。とか考えたらたぶん負け。色んな現実に耐えられなくなる。無邪気に自分の顔ぱちゃぱちゃする外国人さんかわいいとか言い出す。

『平たい顔の民族、此方は何だ』
「……」

え、なんかシャンプーのボトル持って首傾げられたんだけど、はははそんなこのご時世にシャンプーがわからない奴がいるわけ、

「この上んとこ押すと、プシュって出るから」
『おお…!こ、これをどうする?!』
「…髪に、根元ってか地肌洗うようにわしゃわしゃって」
『何という泡立ちだ…!!』

どうしよう、外国人さんのわかりやすく表情に出るオーバーリアクション楽しくなってきた。

それから勝手にリンス舐めた外国人さんにくわっとされたり、どうやら誤解だったらしくリンスの正しい使い方も教えたり、何だかんだ最後にはすっかり打ち解けて一緒に風呂に入り俺が先に上がって服を着たのだが、風呂場から出てこない外国人さんを不審に思い、風呂場のドアを開けると外国人さんは、



いなかった。





…え?何これ、白昼夢だったの?この俺のやりきったぜ感は幻想なの?ちょっとBLも悪くないんじゃねぇのとか思っちゃった俺はどうすればいいの…?!


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