一つ下の、優しくてほわほわした笑みを浮かべる図書委員。僕の委員会の後輩。
彼は昼間の白い月を背に、友人達と幸せそうに笑っていた。
「あはは」
「怖…っ!名前怖いんだけど!無表情で笑い声出すのやめてもらえない?!」
伊作が過剰反応するのにため息を吐き、だけどそれがまた楽しいのだと僕は笑顔を作って人間の塊を指した。
「…?鉢屋達がどうかしたの?」
「伊作、面白いとは思わないか?生まれついての異形が…、ああ、こうして見るとまるで普通かつつまらないただの人間だよね」
「異形?誰の話?」
偉い人の話だよ。
僕が自然に笑みを浮かべれば、伊作は顔を青くしてやっぱり聞かないことにするね、と逃げていった。失礼である。
僕は再度彼等を見た。じゃれあう彼等に、あはは、やっぱり感情のない笑い声が止まらない。
不破雷蔵君、人間の中は楽しいかい?
不破雷蔵様、身分を忘れられて嬉しいですか?
僕は彼の秘密を知っている。
「あ、名前先輩!」
僕の視線にか、此方に気づいたらしい雷蔵君に嬉しそうに名前を呼ばれ、僕は微笑み返した。
作り笑顔は得意分野。人と違う世界が見える僕には、必要だったから。
「今、名前先輩の話してたんですよ!」
「僕の?…ふーん」
まさか君が僕の話をする日が来ようとは。
いつでも注目の的なのは君で、僕も聞きたくないのに異形のものから名前だけはいつも聞かされていた。逆らってはいけないヒト。妖を統べるかの方の一人息子のくせに、人間の普通に憧れた変わりもの。
「ねぇ雷蔵君、僕と遊ばない?」
「遊び、ですか…?」
「そう」
貴方のその希望も望みも日常も、手折って差し上げましょう。
だって、その他大勢と同じく従うだけだなんて、つまらないでしょう?
貴方はそういうの、嫌いでしょう?
拒否の言葉は聞こえません。
愛し愛され戯言は要らぬ。
真昼の月は狂い月。
「一週間、君の正体が誰にもバレなかったら君の勝ち。僕は二度とそれに触れない。バレたら――」
あはは。
さぁ、遊びましょうか雷蔵様。
企画:
あやしあやかし様提出