むかしむかしのおはなしです。
とある女には仲睦まじい家族がおりました。裕福ではありませんでしたが、両親とも妹とも仲が良く、しあわせな家族でした。
むかしむかしの、女が死ぬまでのおはなしです。
死んだ後?そんなの俺にはわかりえないでしょうが。
立花先輩との初対面接吻事件から二週間、俺と立花先輩は自分でも驚く程仲良くなった。
「愁矢、お前にこれをやろう」
「あ、欲しかった結い紐」
それと言うのも上記の会話のように、立花先輩が俺の好みを把握しまくっているのである。まるで俺が三郎と仲良くなった時のような関係だ。
理由が立花先輩の男としてのスキルが高いからなのか、はたまた俺の個人情報の流出加減が半端無いからなのか、もしくは立花先輩が三郎に嫌がらせをしたいという気持ちが常気を逸しているからなのかは不明だ。
「愁矢!…と、立花先輩」
「あ、三郎」
「ちっ…邪魔が入ったな」
駆け寄ってきた三郎にひらひらと手を振りつつ、二人の様子に相変わらずだなぁと静観する。この二人、本当に仲が悪いらしい。
「愁矢に近づかないでください!」
「別に愁矢は鉢屋のものじゃないだろう。なぁ、愁矢?」
「あー…」
どうしよう、正直三郎か立花先輩かって言われたら俺、三郎をとるんだけど…でも俺、頭おかしいからなぁ。
「愁矢は私と接吻した仲だ。つまり交際中」
「え。う、嘘だよな?愁矢?」
立花先輩って、本当に俺の思考読めるんじゃないの?俺が脳内で歪な決断した瞬間にその言葉とか。怖っ。
「うん、俺仙蔵先輩とこーさいちゅー」
にっこり。だって俺まだ、一年生ですから。