初対面した不破は、普通にいい奴だった。多分前世でもいい奴だったんだろう。
俺は柄にもなく、今世で不破が男として生まれたことを神(笑)に感謝した。
「お前が愁矢か」
「はい、私が愁矢です」
さらっさらの長い黒髪を持つ二年生に出会い頭に言われ、しゃきんと背筋を伸ばして答えた。
「そうか。一年い組で学年一頭が良くて変なところが大人で甘味はみたらし団子が一番で鉢屋に好かれている瀬戸愁矢か」
「まぁ、三郎と仲は良いですね」
俺の個人情報流出し過ぎて笑える。
名も知らぬ綺麗な髪の先輩は、一瞬悪どい笑みを浮かべてすぐに打ち消した。代わりに惚れ惚れする程綺麗な笑みを浮かべる。ふむ、俺の外見年齢と精神年齢が一致していたら思わず騙されていた程の変わり身の早さだ。
「よしお前、私と付き合え」
「先輩」
「何だ」
「私、先輩の名前も知りません」
突拍子のないことを言われたので、とりあえず手を挙げて意見すれば、先輩はそれもそうだなと頷いた。
「二年い組の立花仙蔵だ」
「一年い組の瀬戸愁矢です」
自己紹介して手を繋げば、そのままぐいっと手を引かれ、体勢を崩された。何だ何だと顔を上げれば、綺麗な顔がドアップ。
なんと、初対面で接吻された。最近の子、手早すぎだろ。
「立花先輩」
「何だ?」
「先輩ってそんなに三郎嫌いなんですか?」
「ああ、嫌いだな」
だからって、当て付けに俺を使わないで欲しい。