俺と三郎は学園を卒業した後、約束通り一緒に暮らし始めた。
三郎はわざわざ住み込みじゃなくていい城で忍者となり、俺はフリーで仕事をしている。俺が学年一優秀だったとは伊達ではなく、受ける仕事を選んでも忙しい。
でも仲良く暮らしていた。
今日の忍務は雇い主の敵の城を、雇い主の城のお抱え忍と協力して倒せというものだ。集団忍務は逆に面倒だから、普段は基本的に単独以外受けないのだが、今回は雇い主の城に聞き覚えがあったので特別。
「勘ちゃん、ハチ、久しぶりー」
「「愁矢?!」」
こらこら、突然大声出すんじゃないよ。他のお仲間さんが驚いてるじゃないか。
「てか、潮江先輩も同じ城じゃなかったっけ?」
「え、あ、ああ」
「潮江先輩なら…、えっと、潮江先輩は僕達の隊長だから、今は先に潜入調査中」
「ふーん」
一年で隊長になるって、流石あの人だな。本人には絶対言ってないんだろうけど、仙蔵が秀才だって珍しく褒めていただけある。
「愁矢が協力者の天才フリー忍者ってことだよね?!」
「愁矢が味方とか、勝ったようなもんじゃねぇか…!」
「あはは、ありがとう」
俺って信用あるなぁ。で、やっぱ友達っていいなぁ。
「まぁ、楽勝なのは本当だけど?」
「相変わらずの自信家だな」
「有言実行だから凄いけどね」
俺は二人の言葉に笑ってみせた。
天才、瀬戸愁矢。幼い頃から言われ続けてきたそれが、俺の強い強い意志ゆえに血を滲ませた努力の賜物だと知る者はいない。むしろ誰にも悟らせはしなかった。
…ああでも、三郎と仙蔵にはいくらなんでも身体に傷が多すぎるとか、頑張りすぎって言われたけど。
「あー…愁矢、忍務の前に一個質問いい…?」
「ん?いいけど」
歯切れ悪く勘ちゃんに聞かれ、俺は首を傾げた。ハチが何かに気づいたように、勘ちゃんを見て苦い顔をする。
「アレか?」
「…うん」
「…あのさぁ、潮江先輩から愁矢に会ったら聞いてくれって」
「愁矢、どうして別れたのかって」
仙蔵との話か。潮江先輩、仙蔵と同室だったしなぁ。仙蔵の俺への執着とか、仙蔵だけじゃなく俺自身にも、何か思うところがあったのかもしれない。
「邪魔されたくなくて、巻き込みたくなかったから」
「「?」」
「うん、意味わかんないだろうけど、これが答え。潮江先輩にそう伝えて」
三郎と二人きりの空間で、吐きそうなぐらい幸せな日々の中、終わりの前にまた級友に会えてよかった。
俺はあっという間に忍務を終わらせ、学園ではそれでも幾分か制御していた俺の本当の力に驚愕する二人に淡く笑って、三郎の待つ家に帰った。