シラナワ | ナノ




ぶっちゃけしばらく短刀部屋の何処かに泊まりたい。私の心休まる場所はいずこ…。

「って事が昨日の夜にあったので薬研君、お願い。部屋変わって…?このままだと私鶴丸に殺される…」
「いや、何でそうなるんだよ。今の話なら操奪われるって心配じゃねぇのか?」
「本当に話聞いてた?!私が白怖い原因はよくわかんないけど鶴丸だったわけ!きっと今までの嘔吐は私がいつか鶴丸に絞殺される事への警告だったに違いないんだよ!」
「どうどう。大将、落ち着け。飛躍し過ぎだ」

薬研君に優しく背中をさすられて、興奮していた心が少し落ち着いた。見た目はまだ私の方が大人に近いはずなのに、どう見ても薬研君の態度の方が大人なのは私が悪いんだろうか。
…確かに薬研君の言う通り、さっきまでは私絶対に鶴丸に絞殺されるって思い込んでたけど、冷静に考えると発想が飛び過ぎてるな。もっと理性的に考えよう。
白が怖い原因が鶴丸で、私は白を見る度に首を絞められているような感覚もする。…これ、普通に考えたら未来に首絞められるんじゃなくて過去に首絞められた事があるって話じゃないか?

「…あれ、つまり私やっぱり死んでる説?死因絞殺?」
「死んでなくても首絞められりゃトラウマにはなるんじゃねぇか?」
「そうだね。で、話の流れ的に白と首絞めと鶴丸がイコールで繋がるんなら…私、鶴丸に前に首絞められた事があるってなるんだけど…」

もしそうなら、私は前にも鶴丸に会った事があるという結論になるはずだ。鶴丸のまったく覚えてないのは酷いという発言にも繋がる。
だけど、それはおかしい。私が鶴丸に会う機会なんて、此方に来てから…つまりは白色恐怖症発症後にしか無いはずだ。だって鶴丸は付喪神だし、今も私の神力で人間の肉体を得ているのであって…あ、そうだよ。最悪絞殺されそうになったら私が与えてる神力抜き取っちゃえばあいつ刀に戻るじゃん。
話が逸れた。

「もうすぐ白にも鶴丸にも慣れるとかなんとかも言われたなぁ…私だってそろそろ本格的に体力キツいし慣れられるもんなら慣れたいんだけどさ」
「それは、断言されたのか?」
「そうそう、見ての通りまるでそんな気配は無いんだけどね?」

薬研君は難しい顔をした。まあ、私も気持ちはわかる。
ここ数日、鶴丸と関わり合った私は、鶴丸に嘔吐させられたり嘔吐させられたり嘔吐させられたりしたわけだけど、別に彼のそんな所だけを見て来た訳じゃない。戦場への出陣や遠征や畑仕事に馬当番に、と色々やらせたし相当な遠目から他の刀剣の子と話してるのも見た。
確証も無いのに、断言するような子じゃ無さそうだなとは私も思う。後、お茶目ではあるけど私以外には普通に優しい。何であの子私にはお茶目というよりドエスなの?私の事嫌ってはいなさそうなのに、明らかにやってる事いじめだよね?

「俺の目から見ても、大将に対しての鶴丸の旦那はちょっと様子おかしいからな…大将も、吐くのは辛いだろうが他の注意を怠るなよ」
「他?他って?」
「例えば、大将は神力には恵まれてる方とはいえ、名前奪われたら終わりだろ?そういう事だ」
「あー…まあ、信頼してる光忠にさえ教えてないからそれは大丈夫だと思うけど」

此方に来てすぐ、審神者として拾われ色々と説明や注意事項を教えてもらったんだけど、どうやら敵であれ味方であれ人間に名前を知られるのと神様に名前を知られるのとでは全く危険の度合いが違うらしい。
人間では精々呪うぐらいしか出来ない(私からすればそれでも相当怖い)んだけど、神様に名前を知られると所有権の逆転…要するに主が私じゃなく神様の方にされちゃったり、神隠しとして人間が生きるのとは別の次元空間に無理やり存在自体を引っ張られて、そこに居るのに人には認識してもらえない存在にされたり、それはもう大惨事になるそうだ。
もちろん、名前を教えた神様自身にその気さえ無ければ何の問題も無いんだけど、それを出来る力を持つ者相手に名前を教えるなんて絶対にやめなさい、とは先輩審神者からの有難い助言だ。

「ところで、いつもならそろそろ鶴丸の旦那が俺の話かって現れる頃だと思ったんだが、来ないな?」
「その日常を破壊したかったから、光忠に懇願して今日は見張ってもらってるの」
「子供扱いされたくないからって燭台切の旦那にも中々頼らなかったのに、今相当キテんだな」
「ぶっ倒れてからじゃ遅いからね」

私は無い胸を張った。あんまり頼るのは好きじゃないんだけど、周りに迷惑が掛かる前には私は人に頼れる人間です。
今日はノンホワイトデーとして、鶴丸が視界に入らない健康的な日常を楽しむのです。



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