シラナワ | ナノ




「白で連想するものって何?出来れば抽象表現じゃなく実体的なもので」

現在私は、白を嫌う理由のヒントにならないかなと、刀剣達と会う度に白から連想するものを尋ねていた。
鶴丸君を降ろしてから三日経ったけど、彼は…まあ、その、何というか、基本的には優しいしいい神様なのだろうけど、私の白への克服を必要以上に手伝ってくださり……ぶっちゃけもう十回は吐いてて体力的にも精神的にも喉的にも色々としんどいので、もうさっさと克服しちゃいたいのです。
目の前の宗三は、女子高生の小娘とはいえ一応主人であるはずの私に対し、またおかしな事をしている、と雄弁に物語る目で見ながらも口を開いてくれた。

「そうですね…白無垢、ですかね?」
「あー、婚礼衣装とか死装束とかね」

様々な場所に婚礼ならぬ献上され続け、ただ飾られ、死んでいるような日々を過ごした、籠の鳥と自分を称する宗三らしい答えだ。
でもその答えからすると、近いのは神隠しによって視界が白く染まった説なんだよなぁ…。確か、婚礼衣装が白なのって結婚式は元々神に仕える式だからとか何とかでしょ?巫女さんの服が白いのと一緒。これだと神隠しの影響でした、で話が終わる。
…死装束ならどうだろ。死装束が白いのは、諸説あるけど…紅白において、誕生の時赤ちゃんが赤でその逆が白だから、死ぬ時は白としてとか何とか。
え、それ私既に死んでる可能性…?死んだのこそ忘れてるけど、死へのトラウマから白が怖い?

「そ、宗三、私生きてる…よね?あれ、此処ってもしかして人間生き返らせる技術とか進んでる…?」
「そのようなものがあれば、歴史改変軍ももっと別の手段を取っていると思いますが」
「そりゃそうだ」

心配して損したわ。だいたいそんな技術政府が持ってるなら、生き返らせるのは私じゃなくてもっと戦術の才能とかある人を……でも、私は偶然、幸運にも、審神者としての才能、神力を身に宿していた。
偶然?本当にこれは、偶然か…?

「頭痛くなって来た」
「僕は白くありませんよ」
「白見ても吐くだけだから。人の苦しみを、身体異常全般が起こるみたいな大雑把な捉え方やめて」

白見ても頭痛は起こらないからね!首絞められてる錯覚と吐くだけだから!
宗三にどれも変わらないでしょう、みたいな目で見られている気がする。こいつは目でいつも人を小馬鹿にするのをやめるべきだ。小馬鹿にされるような事をしている私も私だけど。

「そういえば、アナタ鶴丸を見てまた吐いたらしいですね」
「えっ、噂回ってんの?やめてよ、入っちゃいけない子の耳に入りかねない」
「噂しなくとも簡単に予想はつくと思いますが…」

いや、私が白で気分悪くなるのは前々から皆知ってるけど、吐くのまでは知ってるの極少数だから。近侍の光忠だって知らなかったんだから!
それに、予想ついたとしてもイコール噂回していいのとは違うんだよ。まあ、宗三は噂回すような性格じゃ無さそうだからいいけど。…鯰尾君辺りの耳に届いてたらアウトな気がする。
鯰尾君の前では、私偶然にも四度吐いた事あるんだけど…あの子、三度目からは白と私が吐く相関性に気づいて、私が吐いてたらまるでそういうパフォーマンスをしているみたいな目で、また吐いてる!って楽しそうに私の事見に近づいて来るようになったからね。鬼畜かよ。

「俺がどうしたって?」

声が聞こえた瞬間、私は反射的に目を瞑った。
敵と対峙した時、目を瞑るという行為は自殺行為だが、この場合私と鶴丸君はたぶん恐らくきっと敵同士ではないし、たぶん恐らくきっと主と付喪神という関係上むしろ仲間なはずなので、この判断は正しい。たぶん恐らくきっと。
…もうこいつは鶴丸でいいや。君とか付ける必要無い。

「宗三、鶴丸今どれぐらい白い?私の平気範囲だと思う?」
「僕はアナタの吐く吐かないの境目なんて知りません」

知らなかった、宗三は声だけでもこうまで人を小馬鹿にしていたとは。もういっそ小馬鹿にしてるオーラ出してるわこれ。

「ですが、そうですね…吐くんじゃないでしょうか?」

大雑把な捉え方の宗三が吐く側プッシュするって事は、もうだいぶ白いんだね!目瞑っておいてよかった!

「何だよ、俺とも話そうぜ」
「近い!」

宗三に危機確認をしてもらっていたら、鶴丸が拗ねたように口を挟んで来た。しかもこれ気配からしても声が聞こえた場所からしても目と鼻の先に居るやつだよ。
尚、それでも私は目を開ける事無く口だけで抗議しました。

「この距離で目も開けないって、君は警戒心が無いのか?」
「逆だよ!警戒してるから目開けないんですけど?!」

こいつ何言ってるんだ?目開けたら下手すりゃお前に向けて吐く事になるんだぞ?
色恋的にからかってるつもりかもしれないけど、それは私には効かないし。初対面が三日前でファーストコンタクト嘔吐からの昼夜問わず嘔吐三昧なのに私に惚れてるわけないだろ。

「ああ、白が怖いんだもんな」

怖い…?嫌いじゃなく、私は白が怖い…?
そう、かもしれない。けど、何でそれを鶴丸が知ってる…?

後、宗三の気配が途中からしないんだけど、まさかあいつ目を開けられない主を残してどっか行った?ひどい、小夜君に言いつけてやるからな!泣いて謝れ!!



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