目を開けると、かつてない身体のダルさに驚き逆に目が冴えた。無理矢理身体を起こして時計を見て、その時間に目を見開いた。

「7時?!朝の…っ?!」

普通に用意したら間に合う時間であるものの、こんな時間に起きたこと自体が初めてだったため、慌てて起き上がった。
だけどすぐに視界が霧がかり、ベッドの上に倒れる。

「…なに?あれ、昨日…何あったっけ?」

昨日のことを思い返すうち、一つの原因に思い当たりため息を吐いた。
ああ、一日に二度も必要の部屋を使ったのは初めてだったから反動か。気だるいはずだ。冷静になってみれば相当腰も痛いし。
とはいえそんな理由で授業をサボるわけにもいかず、私はゆっくりとではあるものの無理矢理起き上がり、必要最低限の準備といつもよりずっと適当に軽く化粧をしてから部屋を出て大広間に向かう。

「アモー!遅かったね、どうしたの?…顔、なんか白くない?具合悪い?」
「ちょっとね」
「…無理はしちゃ駄目だからね?」
「ありがと」

ティファニーに堂々と本当の理由を言うわけにもいかず、私は個人の感情を尊重しながらも心配してくれているティファニーに笑顔を向けた。
ティファニーに会いに朝食には来たものの、食欲が湧かず紅茶を一口だけ飲んだ。

「じゃあ今日、シリウス君達のところ行かなかったんだ」
「まぁ、人生初の寝坊したからね」
「だからかー」

だから?私が怪訝に思いティファニーを見ると、ティファニーはある一点を指差した。そこを見れば、シリウスとジェームズが此方を見ていて、納得する。
確かに、あの話をした次の日に朝待ってなかったんだから、シリウスの性格を考えれば気にしちゃうか。ただティファニーを見てただけかもしれないけど。

「あれ、ジェームズ君こっち来る」
「へ…?」

驚いてもう一度悪戯仕掛人達の方を見れば、確かに此方に歩いてくるジェームズ。

「おはよう、アモ。ティファニー」
「おはよう。どうかしたの?」
「おはよー」

まさかこんな人の多い所で一人で私に話しかけに来るとは、と驚きながらも顔には出さず問いかける。ティファニーはカボチャジュースを片手にジェームズにもう片手を上げた。

「シリウスの話」
「あー…やっぱ気にしてる?単純に体調悪くて人生初の寝坊しただけなんだけど」
「…私先行くねー!アモ、じゃあまた後で!ジェームズ君もばいばーい!」
「うん、ありがと。また後でね」
「ばいばい」

話の内容を察したのか、気を遣って席を立ってくれたティファニーにお礼を言いながら手を振り、ティファニーが大広間を出ていってからジェームズに向き直る。

「あの子、見かけによらず気が利くね」
「ああ、見た目はアホかわいいからね。私の友達やれるだけあるでしょ」
「確かに」

ジェームズと二人で笑う。性交の時に会う以外で、二人きりでこんな会話をするのは初めてじゃないだろうか。
私は存外、ティファニーを気に入っている。勉強面とは別に、あの子は頭がいいし気が利く。もし顔がかわいくなかったとしてもモテていただろう。

「で、何しに来たの?」
「本当にシリウスが気にしすぎて面倒だから来ただけだよ」
「…そんなに?謝った方がいいかな?…いや、それも変か」

別に毎日約束して待ってるわけじゃないし。
唸る私を後目に、もう朝食中は悪戯仕掛人達の所に戻る気がないのか、ジェームズは隣に座ってコップに飲み物を注ぎだした。

「はい」
「…いや、少ないけど周りにまだ人いるんですけど」

牛乳を差し出され、朝から人目のあるところでどんなネタやってるんだおい、と睨む。そんな私を見て、ジェームズはきょとんとしたかと思ったら笑いだした。

「違う違う!セクハラの意味じゃないよ!いや…もしかしたら遠回しにセクハラかな?」
「つまり?」
「カルシウムは腰痛に効くらしいよ」

今度は私がきょとんとする番だった。つまり…つまり、ジェームズは私が今日寝坊した理由をわかって、心配ついでに来てくれたわけか。

「それって、普通の腰痛じゃなくても効くの?」
「さぁ?」

それじゃあたぶん、意味ないじゃん。


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