私にとってジェームズは、友達兼セフレだ。普段から特別よく話すわけでもなく、一日に二、三回会い、その時合図を出したら夜にも会って身体を重ねる。
一方、シリウスにはジェームズのエバンスに対するあれ程ではないにしろ、日々愛の言葉を囁いている。その度に流されたり呆れられているけど、正直私は今の状態で満足だ。好きだけど、ジェームズのエバンスへのそれと違って、私はシリウスと恋人になりたいわけじゃない。
ちなみに、私にとってのエバンスはジェームズの好きな子であり、それ以上もそれ以下もない。すれ違う時、あらジェームズの好きな子は今日も美人さんねと思って、五秒後にはまったく別のことを考えている。

そんな関係が心地いい。私は永遠に変わることないこのままの現状を望んでいた。



「シリウス、おはよー!今日も格好いいね!」
「ああ、おはよ」

朝早く起きてシリウス(悪戯仕掛人ご一行)が来るのを談話室で待ち、朝の挨拶をしてから大広間に朝食を食べに行くのがいつもの私の流れだ。

「アモ、おはよう」
「今日も早いねぇ」
「お、おはよう…!」
「リーマス、ジェームズ、ピーターおはよう。我が高貴なる純血イングロット家は、マグルどうこうはともかく生活態度には厳しいからね」

朝遅く起きた試しがないんだよ、と苦笑すればぽすんと頭の上にシリウスの手が乗った。

「アモの家が羨ましいわ。俺もイングロットに生まれたかった」
「えー、そしたら私とシリウスが結婚できないじゃない」
「っげほげほ!…お前なぁ」

何も口に入れていないにも関わらず咳き込んだシリウスに笑って、頭の上に置かれた手を緩やかに外すように抜け出してシリウス達四人に笑顔でいつもの言葉を告げる。

「じゃあ私先行くねー」
「何度も言うけど、アモも僕達と一緒に食べればいいのに」
「ジェームズ、何度も言うけど先約がありますので」

ジェームズが他の三人に言われる前に定期的に誘ってくれるそれをいつも通り笑顔で断り、ひらひらと手を振ってから小走りに談話室を出た。

私は友達が少ない。
できないんじゃなくて、面倒だから極力作らないだけだけど。
私はどんなに親しい人でもずっと一緒に行動したりするのは虫酸が走るタイプの人間だ。一日誰かと二人きりで過ごすと考えただけで気持ち悪い。だからきっと結婚もできないだろう。
別に人を好きと思えないわけではなく、私はシリウスが恋愛の意味で好きだし、ジェームズとはいい関係を続けたいと思うし、リーマスやピーターのことも好きだ。
ただ、ずっと同じ人とは一緒にいられない。生まれつきそういう人間だった。だから親との暮らしさえも本当は苦痛で、今すぐにでも一人暮らししたいぐらいだ。
ちなみに、この私の秘密を知っているのはジェームズともう一人だけ。だからジェームズは色々と協力してくれて助かっている。

「ティファニー、お待たせ」
「アモ!おはよー!」

大広間に着いてすぐ、綺麗な縦巻き金髪ロングという目立つ後ろ姿に声をかければ、彼女は振り返っていつもの薔薇のように華やかな笑みを返してくれた。

私の唯一の女友達が、このティファニー・ベルだ。
ティファニーは所謂恋愛体質とかいうやつだ。常に誰かしらを好きであり、好きな人が変わる度にその格好いいところを私に訴えてくるところは少々面倒臭いが、それを除けばベタベタして来ないしいつも一緒なのは朝食と授業中のペアぐらいだし、いい友人だ。
ただ、なまじ本人がかわいいものだからすぐにその時好きになった相手と付き合いだし、男を取っ替え引っ替えしている状態になっているのが心配だ。いつか刺されなきゃいいけど。

「ヘンリー君が、それで凄く格好いいの!」
「へぇ、いきなりキスされて何を喜んでるのか私には理解不能だけど」

梟が運んできた数枚の手紙をぞんざいに鞄に突っ込みながら、私はティファニーと仲良く話しながら朝食をとった。

こんな日々が変わらずに続くのだと、この時の私は信じていた。


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