エメラルドちゃんが死んでしまったと聞いて、私は荒れに荒れた。
私のエメラルドちゃん、ポッターなんかに奪われた、私のエメラルドちゃん。私の、わたし、の、
「まさかみよじが教師になるとはな」
「スネイプ君、そいつはお互い様ですよ?」
ふふ、と笑えば学生時代より陰気さの増した風体のスネイプ君はふん、と鼻を鳴らした。相変わらずだ。
スネイプ君とは長い付き合いだ。一歩間違えば、いや一歩正しければ、もしかしたらスネイプ君が私の世界で一番嫌いな存在になっていたかもしれないが、何だかんだでスネイプ君とは今も昔もそれなりに良好な関係を築いている。
まさかお互いホグワーツの教師になるだなんて夢にも思わなかったわけだけれども。
「一つ聞きたい」
「あら、珍しいね。何でしょう?」
新入生の組分けが終わったら私、新任教師の挨拶だというのに、さすがはスネイプ君。私に緊張する猶予をまるで与えてくれない。
まぁでも、そもそもスネイプ君は暇だからといって人とおしゃべりして時間を潰すような社交的な人間ではない。つまりよっぽどの用に違いない。
「今年、お前が就任したのは偶然か?」
スネイプ君の声は新入生入場の音と重なった。それでもはっきりとその言葉が聞こえた私は、視線をただ一点に固定したままスネイプ君を笑った。
「スネイプ君らしくない。そいつは愚問だよ」
君は教師になるような奴じゃない。私も教師になるような奴じゃない。根拠はそれだけで充分でしょう?
「エメラルドちゃん…ああ、会いたかったよ」
私のエメラルドちゃんは、あの頃と変わらず新入生の席に座っていた。あの頃は一つ年下だったけれど、今はずっと年下なんだね。勿論年の差なんて私とエメラルドちゃんには関係ないけれど。
シリウス・ブラックなんかに明け渡されなくてよかった。だが何故私までエメラルドちゃんに会ってはいけなかったんだ。私に預けてくれていたなら、エメラルドちゃんを身も心も全て全て全て私のものにできたのに。
「あの父親に瓜二つの子どもが、お前にとっては…リリーなのか?」
「スネイプ君、エメラルドちゃんはエメラルドちゃんですよ。ほら、あの綺麗なエメラルドの瞳…私のエメラルドちゃんが帰ってきた」
エメラルドちゃんの瞳はいつまでも変わらない。他なんて飾りだ。飾りは…確かに私のこの世で一番大嫌いな大嫌いな大嫌いな男に似ていて気に食わないけれど。私のこの世で二番に大嫌いな男に負わされた傷も気に食わないけれど。
「狂ってるな」
「お互い様ですよ?」
今までずっとエメラルドちゃんを想い続けたのは、アナタだって同じでしょう?ねぇ?
「私、不思議。何でエメラルドちゃんはグリフィンドールなんでしょうね」
前の組分けの時から、謎。今回もまたエメラルドちゃんはグリフィンドール。
何でスリザリンじゃないんだろう。エメラルドちゃんは絶対絶対、スリザリンの方が似合うのに。
「エメラルドちゃんの瞳には、スリザリンのカラーの方が似合うのに」
お題:
花洩様より