起きたらルシウスさんが隣にいないのはいつものことで、起きたばかりなのに外が真っ暗な時間なのもいつものこと。
私はルシウスさんとのことの為に購入したと言っても過言じゃないホテルの一室で、そこそこお値段の張るベッドから起き上がり、カーテンの閉まっていない窓の外を見てため息を吐いた。
…まったく、ルシウスさんと会ってから昼夜逆転しちゃったなぁ。
「あらぁ…?」
軽く辺りを見回し、思わず声を洩らした。
私が起きた時にはいつもなら綺麗に整えられている部屋の中が、私が寝てしまう前よりぐちゃぐちゃだったからだ。
…なにかあったのだろうか?
「奥さんから連絡でもあった?」
それにしても、それぐらい巧く誤魔化しそうなものだけど。
疑問を募らせつつもささっと服を着て、部屋の片付けを始める。
…あー、シーツとかもう面倒臭いから捨てちゃおっかな。別にお金はあるし。水滴落ちてるってことは、シャワー浴びて拭く間も惜しんで出たのかな?さすがに床の跡見る限りは途中から魔法で乾かしたみたいだけど。
「……ん?え?!」
テーブルに投げ捨てるように被さっていた自分のローブを取りハンガーにかけてから、その下のテーブルの上にあったものに思考を停止させ、それから思わず二歩後退った。
「う、うそ。ルシウスさん、忘れ…」
きらきら光るそれを目を見開きながら凝視すること数分…ちくしょう、ああ綺麗だ。きれい。泣きたくなるぐらい綺麗。捨ててしまおうか。うそ。
「ふふ…あー、最悪。臆病者」
自分を罵って舌打ちした。だいたい、私に勇気なんてあったらルシウスさんとこんな関係ずるずる引きずってないし。いい意味でも悪い意味でも。
一度はめてみるぐらい、いいかな…?
「邪魔するぞ。悪いがなまえ、」
「あ、ルシウスさん。これでしょう?テーブルの上にありましたよ?」
「そうか、悪いな。ありがとう。急に闇の帝王から呼び出しがあってな」
「成る程」
だから大事なもの忘れちゃったわけですか。仕方ないですね。
きらきら光るそれは、ルシウスさんの手に渡った途端にまたきらきらきらきら光りだした。吐き気がする。
「じゃあまた」
「ああ、また来るよ」
ぱたん。ドアが閉まってから頭できっちり三分間カウント。177、178、179、180。
崩れ落ちるように床に座った。ああもう汚いな。外は雨の後だったから、靴とか泥がついていて、床掃除まだだから床は汚い。汚い。汚い。汚い。
ねぇルシウスさん、それね、薬指の第二関節から下にいかなくて。だから要らないです。
要らないです。
ルシウスさんが愛を誓ったのは私じゃないと、はっきりと突き付けられた気がしたので。
お題:
空をとぶ5つの方法様より
暗躍の八重様へ相互記念贈呈