女主短編 | ナノ




私とパンジーは友達だ。ああ、頭が痛い。

「ドラコ、たぶんなまえのことが好きなんだと思うの」

泣きそうな顔で私と向かい合いながら言ったパンジーに、私も眉を下げた。
率直な感想を言っていいなら、複雑だけど私もそう思う、なんだけど恋する乙女パンジーの泣きそうな顔を見ながらそんなこと言えるはずもなく。

「私は、友達として、ドラコが好きだよ」

友達として、を強調しながら言った私に、パンジーはへにゃりと笑みを浮かべた。

「本当?」
「絶対。私、好きな人いるし」
「嘘?!誰々?!」
「それは内緒ー」

和んだ空気にほっとしつつ、私はパンジーの追及をのらりくらりとかわした。
自分で話を振っておいてなんだけど、私の好きな人は誰かに言えるような相手じゃないのだ。



「なまえ!」

次の日の昼、私とパンジーが昼食をとっていると、相変わらず私しか見えていないらしいドラコが走り寄ってきた。私は嬉しいような悲しいようなと苦笑しながら手を上げる。

「ドラコ、ご飯まだなら一緒に食べる?」
「ああ!」

パンジーのために言ったものとは気づかず嬉しそうに隣に座ったドラコに、ちくりと罪悪感が胸を刺した。
だって私はパンジーにも言った通り、友達としてはドラコが大好きなんだ。でも仕方ない。私には好きな人がいて、パンジーだってドラコが好きなんだから。ドラコにとって私のこの考えは最低だろうけど。
私としては難攻不落な自分の好きな人を落とすことに専念したいんだけど、周りがそうはさせてくれない。人生って難しい。

「じゃ、私食べ終わったから先行くね!」
「え、じゃ、じゃあ僕も…」
「ドラコ食べ始めたばっかりでしょ?パンジーともうちょっと食べてなよ」
「そうよドラコ、あんまり早く食べると体に悪いわよ?じゃあなまえ、また後でね!」

小声で私にありがと、と微笑んだパンジーに笑みで返し、私は引き留めるドラコの声が聞こえていないかのように大広間を出た。
何でパンジーもドラコも、それから私も、恋の矢印が一方通行なんだろう。…私は当然か。だって相手が――

「みよじ」
「っ!ス、スネイプ先生!は、はい、どうなさいましたか?」

後ろから名前を呼ばれ、私は気を動転させながらも振り返った。そこにいた予想通りの人物にしどろもどろになりながら問う。自分の挙動不審ぶりが恥ずかしく、顔が熱くなっていくのを感じた。
もうお分かりとは思うが、私の好きな相手とはこの、セブルス・スネイプ先生だ。教師と生徒ってだけでも難しいだろうに、スネイプ先生とか正直落とせる気がしない。

「一つ聞きたいことがあってな」
「はい、何でしょう…?」

スネイプ先生が私に聞きたいこと?何だろう?思い当たらな……まさか、私の気持ちがバレたとか。告白もまだなのに、迷惑だってフラレちゃうとか…?

「みよじ、お前はマルフォイと付き合っているのかな?」
「…は、い?」

予想だにしなかった問いに、私は何も考えられずスネイプ先生を凝視した。

「そうか、やはりな。アレの父親のことは我が輩もよく知っている。一度付き合うと決めたなら精々頑張りたまえ」

言うなり踵を返し去っていくスネイプ先生に、私は我に帰った。
なんか、私応援されちゃってるし。好きな人に間接的にフラレた。別に嫉妬してくれとは言わないけど、せめて、もう少し、希望持たせてくれたって…。

「スネイプ先生ッ!!」

気づけば叫んでいた。
だって、こんなくだらない誤解でこの恋を終わらせるなんて嫌だ。私はこれから、この人を振り向かせなきゃいけないの。

「私、ドラコとは付き合ってません!だから、応援なんて要らない…っ!」

いつの間にかボロボロと泣いていた私は、こんなかわいくない顔じゃスネイプ先生を落とせない、と無理矢理Yシャツの袖で顔を拭った。さっさと寮に帰って、明日からまた頑張ろう。
私がそう思った瞬間、スネイプ先生が振り返った。

「…此処からは我が輩の研究室の方が近い。みよじがいいなら、」
「はい…!」

スネイプ先生が言い終わる前に、私は泣いた後だからかわいくないだろう笑顔で即答し、スネイプ先生の隣まで走って行った。

「…みよじはその顔の方がまだましだ」

私の顔を見るなりそう言って、スネイプ先生は先に歩いて行ってしまった。スネイプ先生なりの慰めだろうそれに私は真っ赤になって、慌てて後を追い掛ける。

これだから私は、スネイプ先生が好き。


10000打リクD:ドラコ→夢主→←セブルスで切甘(マカロン蝶羅様に贈呈)


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