女主短編 | ナノ




いじめとか、本当に駄目だと思う。私の中学三年間における皆勤賞の夢の灯し火が消えかけている。もうやだ学校休みたい不登校なりたい黄瀬涼太転校して欲しい。

「名字さん、アナタ聞いてるの?」
「ハイ、キイテマス」

同級生の派手めな女子数名に取り囲まれて校舎裏ってリンチしか始まらないよね。
うん、でも別に彼女達はいいの。彼女達は噂を真に受けて勘違いにより私を蔑んでるだけだからしょうがないの。彼女達は黄瀬君を好きなだけなの。

「何で…アンタみたいな普通の、何の取り柄もない子が…っ!」

だけど私別に加害者ってわけでもないからそんな泣きそうな顔しないでほしい。うう、可愛い女の子に恋愛絡みで嫌われるの心苦しいよぅ…。私もね、皆と心から同意見だし、そもそも全ては黄瀬君が悪いんだよ。



「先輩達、俺の好きな人に手出さないでもらえます?」

だからそんなまるでヒーローみたいに飛び出して来られても全然ときめかないし、いっそ一難去ってまた一難だし。
ちょっと、さっきまで私に絡んでた女子達待って!私もそっちがいい!黄瀬君に睨まれて立ち去る側を希望する!間違っても心配シタンダヨーみたいな優しげな目で見られる側はいやだっ!気持ち悪いっ!

「名字先輩大丈夫ッスか?!」
「あまり近寄らないでほしい」

事故って一ヶ月以上学校来ないで欲しい、という言葉をギリ堪えて一歩後退り黄瀬君から離れた。黄瀬君はまるで傷ついたみたいに眉を下げる。性格悪いと思った。
私と黄瀬君には全然接点が無い。先日街で困ってる所を同校のよしみで助けて以来、何故か校内で好きだと公言されるいじめのターゲットにされた。情けは人の為ならずと聞いていたのに、デメリットどころじゃない被害に私の善良な気持ちが死にかけている。
…!そうだ、こんな時こそ友人園田から教わった黄瀬君撃退ワードを発する時じゃないか私?!確かに物凄く恥ずかしいし、撃退したとしても一月ぐらいはいじめっ子黄瀬君によって広められた私の痛い噂が飛び交い恥ずか死ぬけれど…それも、一時の恥!私の学校生活を円満にする為の細やかな犠牲に過ぎないっ!!名字名前よ、役者になれ!!

「黄瀬きゅんは、私に構わずモデルやらバスケやらに勤しめばいいと思うよ?」


ドヤァアアア!!
この、最大限のぶりっ子甘々な裏声と!無意味に胸の前で指を絡めた手!完璧にわざとらしい上目遣いアンド首傾げ!極めつけにこの噛んだのか滑舌悪いのか何とも言えない黄瀬きゅん呼びよ…っ!
凄い、今私最高に気持ち悪い!!自分で言ってて鳥肌立ちそうステキ!!どうだ、黄瀬君よ!こんな私には流石に嘘でももう好きだなんて言いたくなくな……

「ぁ、えっ、と…っ!す、すみません今こっち見ないで欲しいッス…!!」


えぇえー…?
何で顔赤いの…。演技…だよね?こっちの意図に気づかれた、のか?何だと、黄瀬涼太思った以上に手強いじゃないか。あくまで私へのいじめは続行しつつ、後で仲間内で「名字センパイ今日こんなキモいぶりっ子したんスよ!プークスクス!ウケルー!」と嗤うのか…くっ、なんて性格悪い奴だ!!

「つ、次は負けないから!!」

まんまと黄瀬君の術中に嵌っていた事が恥ずかしくて涙目になりながらも黄瀬君を睨みつけ、負け犬よろしく教室まで逃げ帰った。


「という訳なの!私可哀想っ!!」
「っ…ふふ、もう何処から突っ込んでいいのか、わからない…!とりあえず最後のは黄瀬視点だと辛いけど女のいじめに強気に立ち向かう健気な名前ちゃんに見えただろうし、何よりこの子黄瀬きゅん本当に言ったよ!おもしろっ!!」

私が今日の可哀想な私を報告すると、友人園田はさもおかしそうに笑い始めた。ひどい。人の不幸は蜜の味なのか貴様!!

「そう!黄瀬きゅん効かなかったんだよ!意図を見破られて…アイツ手強いよ!!」
「名字ってさ、何で見た目は…まぁ特別美少女ではないけどキレーめで頭良さそうなのに、喋ると純粋培養な天然いっそバカなの?かーわいっ。黄瀬が惚れんのもわかるわー」
「園田、会話のキャッチボールしよう?!」

それに今の外見褒められて内面貶されたよね?!

「でも名字は私のだからまだ暫く黄瀬にも誰にもあげなーい」
「…うん、もういいよ。園田ので」

だから明日も黄瀬君のいじめと戦う私にアドバイスください、園田様。


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