俺は、グリフィンドールに組み分けられた時、微かに絶望を覚えた。
家にまったくの疑問を覚えていなかったわけじゃねぇけど、はっきりと違うと分けられちまえば不安と焦燥に襲われる。
何より、ずっと片想いしていた幼馴染のなまえはその家名の例に漏れずスリザリンで、血を裏切ったグリフィンドールの俺と、スリザリンのアイツは話す機会も無くて。
だから、久しぶりになまえの顔を見れて動揺して箒から落ちた俺はメチャクチャ格好悪ぃし、再会がこれかよとか思うし、恥ずかしくて死にたいとも思うけど、駆け寄って来てくれる昔と変わらない姿が最高に嬉しかった。
「だ、大丈夫?!今結構な高さから落ちたよね?!」
「平気。あー、いや、それよりさ、その久々だし、ちょっと話でもしねぇか?」
「え、ええ?!医務室とか行かなくていいの?!」
「大丈夫!本当に大丈夫だから!」
むしろ怪我しててもこのチャンスを逃す方が俺には痛い。
なまえはそんな俺に呆れたように笑って、別に話なんていつでも出来るのに、と言った。
嬉しかったけど、嘘だとも思う。まともに話したのなんて、ホグワーツに入学してからは一度も無かったじゃねぇか。
久しぶりにちゃんと見た、なまえの短かった髪は今では背中まであって、顔つきも可愛いというより綺麗になったし、身体ももう子供の体型じゃなかった。
「話かぁ…うーん、あ、この前マクゴナガル先生がシリウスの事褒めてたよ?凄いじゃん。成績は」
「はって何だよ、はって」
「マクゴナガル先生が言ってたの!成績だけ、は!優秀だって」
くすくすと笑うなまえの口元に思わず目が行く。
美人だ。触りたい。
「ん?何、怒った?」
「あ…いや、髪伸びたよな」
自然に見えていますように、と馬鹿みてぇな事を祈りながら髪に触れた。触れると思っていたよりも柔らかい髪質に、心臓が揺れる。
「うん。願掛けしてるの」
「願掛け…?」
「そう、幸せになれますように」
随分と壮大な願掛けだと感想を抱いていれば、なまえは照れたように俺を見て笑って、はいお触りおしまい!と俺の手を取り自分の髪から手を離させた。
その時握られたなまえの柔らかい手の感触に、顔が真っ赤になっていく。
「シリウス…?」
なまえは心配そうに俺の顔を見ている。
その大きな、潤んでいるような目を見ていると、俺は頭の芯がぼんやりと霞がかったようになっていくのを感じた。
「なまえ、動くなよ」
「え。え、え、え、何?虫?!」
慌てて、ぷるぷる震え怯えたような顔をしながらも震える以外の動きを止めたなまえに、すぐ顔を近づけ唇を奪う。
「っ?!は、ちょ…ぅ、ん」
一度口を離すと叫ばれそうだったから、仕方なくまた今度は深く犯すように口付けた。うん、仕方ない。仕方な…い゛?!
「ッ痛ぇええ!!お前、普通人の舌噛むか?!殺す気かよ?!」
「い、いきな、ディープしてく、奴に、常識とか説かれたくないわ…!!」
真っ赤な顔でまだ息が整ってもいないのに言い返して来るなまえの正論に、何も言い返せない。
「…ごめん。つい」
「つい?つい?!アンタ、ついで人の唇奪うの?!」
「いや、それはお前を好きだから、」
「え?」
「あ」
零れてしまった本音に、言い訳も出来ずに固まる。なまえも固まる。
「っ…全っ然信用出来ない!!」
でもそう言って走り逃げて行ったなまえの顔は真っ赤だったから、そう悪くないかもしれない。
少なくとも、なんか前より話し掛けやすくなったし!
200000打お礼フリリク、みなこ様へ