女主短編 | ナノ




なまえはかわいくて控えめで大人しくて大和撫子でちょっと病弱でだけど笑顔はやっぱりかわいいエバンスの友人。
ちなみにこれ等は噂とジェームズのエバンスへの称賛の合間に極たまに出てくるなまえの話と、俺がまた極たまに見るなまえが保健室に入って行くところや友人と話している姿によって導き出された結論だ。

「俺、理想の女ってなまえかも…」
「え、急にどうしたんだい相棒?恋?君が?ぷーっ似合わなっ!くすくすっ!」
「一発殴っていいか?」

と言いながらジェームズの顔面に上段回し蹴りを放った。
ジェームズは割れた眼鏡の破片でも刺さったのか、床にのたうち回り目がぁあああ!やらムスカァアアア!やら喚いている。
やっぱリーマスに話せばよかった。

「というのは冗談で。まぁ良かったじゃないかシリウス!僕は君の恋を応援するよっ!」
「立ち直り早ぇな」
「リリーの愛の鉄拳に比べたら笑えるレベルさ!」

色々と突っ込みどころのあり過ぎる発言だったが、面倒なので俺はスルーした。

「でもなまえか…ちょっと意外だな」
「は?いいじゃん、ちっこくて可愛いじゃん」
「あー、まぁそれは確かに」

リリーの方が可愛いけど、と聞いてもいないのに付け加えるジェームズはさておき、どうやってなまえと仲良くなるかと考える。
するとどれだけタイミングがいいのか、丁度廊下から歩いてくるなまえが見えて、思わずジェームズの腕を引いた。

「あ、なまえだね。なまえー!」
「や、ジェームズ。リリーなら今図書館だと思うよ」
「ありがとう!…じゃなかった!今日の用は違うんだよ!」

なまえの軽いノリに僅かな俺のイメージとの差異に首を傾げていると、さっきとは反対にジェームズに腕を引かれた。

「僕の親友のシリウス。格好いいでしょ?」
「あー!ブラックの!そうだね、イケメンだね!女泣かせてそうっ!あはは!」

…は?あれ?なまえは控えめで大和撫子でふわっと笑う顔がかわいくて……え、誰。

「どちら様ですか?」
「…何言ってんのシリウス。ほら、なまえだって」
「まぁ私君達程有名じゃないし。なまえでっす!はじめましてこんちは!」

…………。

「っざけんじゃねぇよ!テメェの何処がなまえだ?!なまえはなぁ、遠慮がちで優しくて病弱で大和撫子なかわいい奴なんだよ…ッ!なまえの名前を気安く名乗ってんじゃねぇよ!なまえがんな言葉遣いするはずねぇだろ!」

「…えっと、ジェームズ彼は私を褒めてるの?貶してるの?過去お付き合いしたなまえさんと比べられてる?」
「いや、ホグワーツのなまえは君だけだし、……褒めてるんじゃない?」
「褒めてんの?!今の褒められてたの?!」

は?ホグワーツのなまえは一人だけ?

…いや、確かにコイツも顔だけは俺の知るなまえだ。

「でもお前全然元気じゃん。何処が病弱だよ」
「え、うん。病弱じゃないけど」
「…あ!でもなまえ、サボりでよく保健室行くからたまに病弱だと思ってる人居る居る!」
「へーっ!それは新事実!」

え。

「ジェームズお前、なまえは控えめで優しい…んだよな?」
「え、私が控えめ?優しい?」
「リリーの事いつも教えてくれるし、よく僕等に遠慮して居なくなるじゃないか!」
「そらね、巻き込まれたくないからね」

…ん?

「大和撫子…」
「それは外見じゃない?黒髪ストレートの特権ね!」
「ダンスパーティーの時のなまえのあの着物、綺麗だったしね!」
「そのせいで踊れなかったがな!おばあちゃんがあれにしなさいって言うから…!」

なんか、話の方向が明らかに…え?俺の恋の種は?何、このおばあちゃんのぶわぁかぁあああとか廊下で叫んでるちんちくりんが俺の好きな奴なの?


「っ俺は絶対ぇ認めねぇ!!俺のなまえを返せ…ッ!」
「何この人?!やっぱり怖い!」
「なまえはんな顔しねぇよ!」
「知らないよ…!」

まだ俺の頭の中のなまえは優しく儚げに笑っていて、現実を受け入れられない俺は目の前のなまえと名乗る偽者を涙目で睨み付けた。


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