何時からか、この世の全てが張りぼての玩具箱にしか見えなくなった。
そうしたら、どんな血生臭い事もどんな穢い事も、躊躇がなくなった。
人殺しだって、ただのゲームに過ぎない。
「よう、赤いの」
「…あら、高杉君」
血を吸った日本刀を、錆びないようにと近くの公園の噴水に溜まった水で濯いでいたら久しぶりに高杉君に会った。
というか、しゃがんで洗ってたら後ろから話し掛けられた。ゲーム中だったら殺しちゃってたぞ、もう。
「テメェも随分狂ったな」
「あら、知った口叩くね。高杉君も大概よ?」
「まぁな」
肯定された。なんだ、つまらない。
私はまた、ただ日本刀をまた人を斬れるように洗う作業に戻った。
「おい、血塗れ女」
「何よう」
「お前、明日幕府の犬んとこ行け」
何時からか、高杉君は私の名前を呼んでくれない。構わないけど。
高杉君の不穏な発言に、私はまた高杉君を振り返る。いや見上げる。まぁ、もう血抜けたからいいや。
「祭りなの?」
「まぁな」
「高杉君の祭りのために私に死ねと?」
「死ぬたまか?」
「ふふ、死なないけどー」
笑って立ち上がった。そのまま話すと、首痛いのよ。
「死ぬなよ」
「何それ、死ねって言ってるみたい」
「言ってねぇだろ」
高杉君は死亡フラグってやつを知らないらしい。まぁ、高杉君だし納得かな。河上辺りなら通じるだろうけど。
なら行かせなきゃいいのに、は言わない。私はそれなりに高杉君好きだから。
「じゃあさ、約束する?」
「お前、約束破るじゃねぇか」
「仕方無いでしょ。どうせ破られるんだから、私から刻まなきゃ」
約束なんて、守られないのが当たり前。だって――
「契約は?契約ゲーム」
「書類でも書けってか?面倒臭ぇ」
「違うもん。はい、高杉君手出して」
そこで迷わず手を出すくせに聞き手じゃない方を寄越す辺り、高杉君らしい。
私は高杉君の左手の小指に、自分の小指を絡めた。
「…おい」
「ゆーびきーりげーんまん」
知ってる?この歌ね、拳骨万回打たれても約束出来るかって聞いてるの。
「うーそつーいたらはりせーんぼんのーます」
こんなの、もう約束のレベルじゃないじゃんね。
「ゆーびきった」
わらった。
「契約ゲーム。私が生きて戻らなかったらね、」
続きは高杉君の胸ぐら掴んで引き寄せて、耳元で囁いた。
ね、晋助と私だけの秘密なの。
同じ傷持ってる人達で、私と同じ後ろしか見れない貴方にしか教えてあげない。
契約ゲーム死なない。私、まだ死なないよ先生。
企画:
僕の知らない世界で様提出