女主短編 | ナノ




私はサンジ君が好きだ。例えナミやロビンにメロメローンで話しかけてる時私をその枠に入れてくれなくても、そもそも私に話しかけてさえくれなくても好きだ。

「サンジ君、遊ぼう?」
「ごめんよなまえちゃん、今から夕飯の支度をしなくちゃ」
「そっかぁ…」

私はしょんぼりとした顔をしてサンジ君をちら見したが、サンジ君は私を見てさえいなかった。てか、さっきから一度も視線が合ってない気がします。


「ナミ、私に足りないのは何だろう…」
「色気」
「…今日はもう見えるんじゃね?ってぐらいのミニスカで頑張ったのに」

私は穿いているミニスカートを摘まみながらため息を吐いた。何だろう、ガーターベルトぐらいするべきだったかな?
と言うか、別に私は色気がないわけじゃない。負け惜しみじゃなくて。普段から色気を出すのはトラブルの元だから、抑えているだけだ。
何てったって、元売れっ子No.1娼婦。あの手この手で男を落として色恋、枕もお手のものだった。

「そうねぇ、本音を言えばアタックが弱いんじゃないの?」
「…んー、でもさ、同じ船でこれからも仲間としてやってくわけだし…気まずくなるのはなぁ」
「その思考がダメ」

ナミにズバリと指を指され、私はベッドに仰向けに寝転んだ。それから顔を意図的に赤らめ、娼婦時代客に好評だった恥じらいながらもお待ちしてます誘い受けのポーズをとる。

「夜這いかけよっかなぁ…」
「ま、まぁいいんじゃない?」

私はベッドの上でごろりと寝転がって、両腕を立て一部の客に大好評を受けた雌豹のポーズをとる。
ナミからGoサインが出たので、元娼婦の麦わら海賊団踊り子なまえ、今夜サンジに夜這いかけようと思います!



そして夜、男部屋に忍び込んだ私は皆のカオスな寝相に驚きながらも、サンジ君に近寄った。
ちなみに今日は薄手のキャミワンピだけという、どうぞお召し上がりくださいませ、な格好だ。
とりあえず体重をかけないように馬乗りになり、さてどうするかとそこで止まった。

娼婦の身体は商品だ。よって、あらゆる手で男を落としては来たが買いに来るのは男の方。夜這い経験なんてもちろんない。

とりあえず、下脱がす?勃たせちゃえば此方のもんかしら?

「なまえちゃん…?」
「へ?あ、サ、サンジ君。起きちゃった?」
「何してるんだい?」
「……夜這い?」
「…」
「…」

沈黙が痛い。もう後には退けないと正直に言ってみたはいいものの、その反応は一番苦しい。
…勇気が消えた。もう帰ろう。

「サンジ君、えっと…これについてはまた明日話そうね」
「…ああ」


私は部屋まで逃げ帰りました。

「あらなまえ、早かったわね?」
「サンジ君がヤる前に起きて沈黙の痛さに断念しました」
「…ああ、そう」

部屋で本を読んでいたナミに報告すると、ナミは納得したように頷き本を閉じてベッドに潜り込んだ。
…ナミ、私そっとしておかれると余計に傷つくタイプなんだけど。

だが今回の一件で判明した。
…サンジ君はまず、私を女として見てくれていない。だって夜這いに行った女にあの反応だよ?
そうか、まず私を女だとわからせることから始めなきゃダメだったか。よしじゃあ、サンジ君の前で誰かとエッチすればわかるだろう。私は床上手だ。サンジ君も私の魅力に気づくかもしれない。
昼間にナミに気まずくなるのはとか言ったことを棚に上げ、私はじゃあヤルなら誰とヤルかなと考え出した。

「なまえ、アンタ変なことしないでよ」
「?!」

私の心を読むように、もう眠ったと思っていたナミが口を開き、私は肩を跳ねらせた。

「明日は部屋空けてあげるから。…ああ、後始末はちゃんとすんのよ」
「え、はい」

うんざりとしたように言って目を閉じたナミに、私はよくわからないまま頷いた。


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