女主短編 | ナノ




私の兄は、優秀でありそしてその数倍変で面白くて、好かれやすく嫌われやすい人間だった。
まぁ、兄自体が人を好きやすく、また嫌いやすい人間なので、自然の摂理かもしれない。

「どんなに頑張っても勝てない兄を持つと、色々大変だよねぇ」
「…まぁ、そうですね」

そんな私と一個下のレギュラスは、付き合っていたりする。お兄ちゃん達に言ったら色々面倒臭いから、内緒で。

「本当、なまえはジェームズ・ポッターの妹とは思えませんよ」
「レギュラスこそ、シリウス・ブラックの弟とは思えない」

顔を見合わせ、くすくすと笑い合う。
私はハッフルパフで、レギュラスはスリザリン。だけど何処かに行く度に偶然レギュラスと会って…お互いストーカーかって思ってたんだっけ。なつかしいなぁ。

そうつまり、私達は案外仲良くやっている。

「レギュラスさん、お兄ちゃんは私を巻き込みたくないからって騎士団の話、私にはしませんよ?」
「ふっ…それなら、僕だって闇の陣営の情報渡す気はありませんけど?」
「情報は要らないけど、レギュラスの隣にはいたいな」
「不幸になりますよ?」
「不幸にしてよ」

レギュラスがしてくれるなら、その世間一般から見た不幸も、私は幸せに感じるだろうから。

「お兄さんが泣きますよ」
「ふふ、そうね。レギュラスは、お兄ちゃんと同じで私を巻き込むの、嫌?」

いつもお兄ちゃんの背中を追い掛けてきたけれど、本当はどんな薄暗く悲しい道だって、私は誰かの隣を歩いていたかったの。

レギュラスは、私を不幸にしては、くれますか…?





今日はホグワーツの卒業式だ。
お兄ちゃんは、忙しいのにリリーさんと出席してきた。もう、この人のシスコンは…はぁ。

「レギュラス!」
「卒業おめでとうございます」

これで会える時間少なくなっちゃうな、と微かに寂しさを覚えてレギュラスを見たら、笑われた。

「一年だけ待っててくださいよ」
「…うん」
「ほら、お兄さんのところ行ってあげましょう?」
「っ…うん」

レギュラスのことが好きで、大好きで、だけど結局私もブラコンだ。

「なまえ!」
「あの、リリーさんちょっといいですか?」
「え?うん、何?」
「なまえ?え、僕は無視?」
「お兄ちゃんちょっと黙ってて」

相変わらずの空気クラッシャーだ。まぁ、やりやすいと言えばやりやすい。その方が誤魔化しやすいから。
…ううん、違う。誤魔化しちゃいけない。

「これ、家に帰ったら読んでください」
「手紙?」
「手紙です。しあわせの手紙」
「幸せの?ふふ、ありがとう。なまえがこういうことしてくれるなんて」

リリーさんに微笑んだ。幸せになってと笑った私に、リリーさんは目を見開き何か言いたそうに口を開く。
でもその前に、私はリリーさんから視線を外しお兄ちゃんを見た。

「それでね、お兄ちゃん」
「やっと僕の出番か!何々?僕には何をしてほしいんだい?」
「うん、少し一緒に歩いてほしいの」

それだけ?と不満気に首を傾げたお兄ちゃんにくすくすと笑いながら、それだけがいいのとその背中を押す。
触れた手の体温は暖かくて、お兄ちゃんが背を向けてるのをいい事に俯いて唇を噛み締めた。

「お兄ちゃん、前歩いて」
「?いつも隣がいいって言ってなかったっけ?」
「バカ。いくら妹でも隣はリリーさんのものでしょ。それに、言いたいことがあるから…隣より、後ろがいい」

お兄ちゃん、私ね、隣を歩いてくれる人ちゃんと見つけたよ。
前の私の気持ちは、ブラコンって言うより確かに恋で、好きな人の居るお兄ちゃんを見てるのは苦くて辛くて、でも楽しかったよ。

「あのね、お兄ちゃん」
「うん」
「…」
「なまえ…?」
「駄目っ!振り返らないで!!」

とっさに叫べば、お兄ちゃんは振り返るのをやめてくれた。ただ、二人とももう歩いてはいない。
お兄ちゃんにも、私の言いたいことが軽いものじゃないことは伝わっただろう。

私は深呼吸した。
泣くな、私。泣いちゃいけない。

「お兄ちゃん、あの、ね…」
「…何?」

「さようなら」

囁くと同時に、姿眩ましした。

さようなら、さようならお兄ちゃん。永遠に。
だって私ね――

「闇の帝王…どうか私に刻印を」


不幸せに、なりたいの。


お題:√A様より


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