女主短編 | ナノ




フリルとか、レースとか、ピンクとか、グロスとか、ヒールとか。
かわいいものが好き。女の子ってものが好き。毎日朝早くに起きて、お化粧して、髪を巻いて、鏡の前で10分ぐらい悩んでその日のコーデを決める。そういう自分のことも好き。


「草壁、いい加減諦めない?」
「貴様がいい加減にしろ」

毎度よろしく放課後の風紀点検に引っかかった私は、ため息を吐いてピンクの水玉の腕時計を見た。また帰りが遅くなる。朝に点検があったら遅刻しちゃうし。効率悪っ。
ただでさえ、最近よく物がなくなったり友達が突然距離を置いてきたりで機嫌が悪いのに、とどめのこれだ。苛々。
普通は強面な草壁やその他風紀委員の威嚇で皆簡単に服装直すらしいけど、私は見慣れてるしこのスタイル絶対やめない。無駄なんだから早く帰せー。

「…幼なじみのよしみで今まで見逃して来たが、お前はどうやら委員長に直談判してもらわねばならないらしいな」
「ちょ!私に死ねと?!委員長ってあの、あー名前忘れた!あれでしょ?中学生が日常的に持ち歩いているはずのないトンファーをいっつも振り回して血だまり作ってるんでしょ?!」

明らかに危ない人じゃん!無理!

「名字は一度頭を殴ってもらうぐらいが丁度いいだろう」
「薄情者…!三年まで上手いこと風紀委員長避けて来たんだから、ここまで来て殺されてたまるか…!」
「今まで本当に不自然な程委員長と名字は会わなかったな」

神妙に言う草壁に、私は頷いた。全校集会等を抜けば、私は今まで校内校外問わず風紀委員長に会ったことはない。私の運は相当いいらしい。

「名字名前」

知らない声に振り返れば、それはなんと風紀委員長だった。どうやら私のよすぎた運は尽きたらしい。
無表情で此方に向かって歩いて来る風紀委員長に、私は本能的に逃走経路を探した。死ぬ。今ここで逃げられなければ死ぬ。
ちなみに今の私の格好は胸元の開いた白のシフォンワンピにピンクのカーディガン、ネックレスにピアス、ヒールの高いピンクのパンプス。
一瞬でわかる校則違反だ。だってもう帰るだけだったし、このまま街で遊ぶ予定だったんだよ!

「あ、あの委員長!恐れながら今回だけは見逃してやってはもらえないでしょうか…!コイツには俺の方からキツく言っておきますので!」

草壁ぇえええ!ナイス!格好いい!何だかんだ言ってもさすがは幼なじみ!

「煩いな、草壁は点検続けてなよ」
「はい、失礼しました」

草壁ぇえええ!おま、諦めるの早っ!もうちょっと食い下がってよ!あっさり見捨てんなよ!

「君、名前は?」
「名字名前です、すみません」
「名前ね」

あれ、まさかの名前呼び。風紀委員長の家系は女の子は名前呼びと代々決まっているんだろうか。どんなタラシ家系だ。
って、何か知らないけど風紀委員長うつむいていらっしゃる…!あれ、イケるんじゃない?今ならイケるんじゃない?

「…も、申し訳ありませんでしたぁあああ!」

私は叫びながらお気に入りのピンクのミュールを仕方なく脱ぎ捨て、逃げた。
何故か風紀委員長が追ってくることはなく、家に辿り着いた頃には足が非常に痛かった。


「…また話せなかった」


お題:花洩


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