隣で眠っているりんねの口が薄く開いて、笑みを作った。どんな夢を見ているのか桜は気になった。できれば私がでてきたらいいのにな、なんて考えてりんねの隣で目を閉じる。桜はりんねの隣で眠る今この瞬間がとても幸せだと、今日もりんねのことを考えながら眠りにつけることを嬉しく思った。隣のりんねの手をそっと繋いでみる。りんねの手はうっすらと汗をかいていて、それでいて血を通っている暖かさもあった。そして同じくらい自分の手も暖かいことに気づいて嬉しくなる。りんねの手は自分の手と比べて大きくてごつごつしていて、男を感じると思う。桜の心臓がドキドキと脈打つのを感じて、目を開ける。丸見えのりんねの首筋に愛しさを感じてそっと口づけた。口づけるとふわりとりんねの香を感じて、くらくらした。
「六道くん、今日も大好きだよ」
桜はそっと呟くと本格的に寝る態勢に入った。いつかきっと、死がふたりを分かつ時が来るのだろうと桜は感じていた。自分は人間で彼は死神だ。寿命が違うことなど100も承知だ。最初はそれがとても怖かった。しかし、最期の時までりんねの顔が浮かべば、それが幸せに思えると桜は考えた。そのことに気づけたので今日はいい夢が見られそうだと思った。
桜が眠りについた時、りんねはそっと眼を開ける。顔は心なしか赤く、少し照れているようだった。
「……心臓に悪い」
最近桜の夢見が悪そうなのはなんとなく気づいていた。しかし、桜はなかなか自分に思ったことを伝えてくれない。もっと甘えてくれてもいいのに、とりんねは思う。桜は何を考えているのか読みにくいから、言ってほしいし、知りたいと思った。
「おれはいつも、お前に振り回されてばかりだ」
桜の頭をそっと撫でながら髪にキスを落とした。
「六道くん」
「……まっ真宮桜!?起きていたのか」
「うん、なんだか目が覚めたよ」
うろたえるりんねに対して桜は「六道くんも起きてたんだよね。おあいこだよ」なんてさらっと言う。やはり桜には振り回されてばかりだとりんねは思った。桜はりんねの目をじっと見つめる。
「私も結構六道くんに振り回されてるよ」
「え?」
「私も六道くんのことが好きってこと。出会った春も、はしゃいだ夏も、すれ違った秋も、一緒に歩いた冬も、六道くんと一緒だから、どれも好きだよ」
桜はゆっくり、言葉を選ぶように口に出す。伏し目がちな姿が色っぽいとりんねは感じた。耳は仄かに赤く、桜も照れているのに気づいて、りんねも気恥ずかくなった。
「……真宮桜、出会ってくれてありがとう」
桜にそっと頬ずりして、二人の時間は止まった。
150412