るーみく | ナノ



死ねたですすみません。暗い










「ねえ、どうして六道くん、泣いてるの?」
何もなかったように目の前の彼女は言う。
「私が悲しいはずなのに、六道くんが泣いてたら、どっちが悲しいのかわかんなくなっちゃうよ」
真宮桜がそっとおれの頬に触れる。そんな真宮桜の手は少し透けていた。
「真宮桜……」
おれは今、お前の傍にいたい。そんな一言が口から出ることはなかった。真宮桜はこれから輪廻の輪に乗るのだ。それを送るのが今の自分の役目だった。真宮桜は何も言わなかった。おれも何も言えなかった。2人でぼーっと座って目の前で大きく回る輪廻の輪を見ていた。これに乗ると、もう彼女には会えなくなるのだ。それを実感すると、自然と涙がでてくるのだ。
いつかこんな日が来ることは理解していた。おれには死神の血が流れていて、彼女は普通の人間で、生きる世界が同じようで、根本から違うのだ。頭ではそんなことがわかっていても、実際にその場面に遭遇すると、納得ができなかった。
「……真宮桜」
真宮桜がそっとおれを見上げる。おれと比べてとても小さい彼女は、その小さい体で全てを抱えて輪廻の輪に乗る。真宮桜の方が不安に違いないのに、おれがこんなに悲しんでいたら、きっと余計に不安にさせてしまうだろう。
「おれは今、真宮桜に笑っていて欲しい。ずっと笑っていて欲しい」
真宮桜は驚いたように少し目を開くと、恥ずかしそうに伏し目がちになった。
「それは、私も思ってるよ。六道くん。よかったら、笑顔で手を振ってお別れしたいな」
真宮桜は、おれの好きな、天使のような笑顔でそう言った。本当に彼女はとても優しいと思う。こんなにだらしのないおれに対しても平等に優しさをくれる。もっとおれにだけにその優しさを向けて欲しいとワガママを思うこともあった。真宮桜の優しさに触れるととても暖かく、幸せな気持ちになったから。
「六道くん、声に出てるよ。ちょっと恥ずかしいな」
クスクスと笑いながら真宮桜が言う。その笑顔を見るとなんだか少し安心した。
「……真宮桜。大丈夫、怖くない」
「……ふふ。六道くんがいたら、なんだか安心するよ。それに、きっとまた会えるよ。転生してから、なんだかそんな気もするんだ」
真宮桜は微笑みながらひらひらと手を振る。おれはそんな彼女に手を振り返し、輪廻の輪に向かっていく彼女が見えなくなるまで手を振り続けた。
貧乏になって、幸せだなんて感じたこともなかった。でも真宮桜と出会えて幸せとは何か教えてもらえたような気がする。これからはおれも真宮桜のように優しさを届けていきたいと思う。転生した彼女にまた幸せを知ってもらえるように、教えてもらえるように。


150405
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