るーみく | ナノ



気持ちが大きくなりすぎて、思わずペンをとった。けれど、気持ちが大きくなりすぎて、大好きから先が書けなくなった。桜はペンを置いてため息をつく。自分の語彙力の無さを少し呪った。

(今ごろ、何してるんだろう)

思いを寄せている彼のことが気になった。そういえば昨日は「また明日」と言って別れたのに、今日は土曜日だから一回も会えていない。そんなことを考えたら、桜は急に彼に会いたくなった。財布を掴み、コンビニに行き、フルーツゼリーを買って、いつものクラブ棟までの道を歩く。最近暑くなってきているからフルーツゼリーを選んだけれど、食べ盛りの彼にはもっとお腹の溜まるものがよかっただろうか。それでもきっと優しい彼は、渡したら謝りながら、でも少し嬉しそうにするのを桜は知っている。その顔を想像すると思わず笑みがこぼれた。

「六道くん」

クラブ棟の扉を開くとりんねと六文が内職をしていた。

「真宮 桜?」
「お疲れ様、差し入れ持ってきたよ」

そう言いながら桜の持ってきたフルーツゼリーを渡すと、りんねは桜の想像通りの表情をしたので、桜は満足した。それから少し造花作りを手伝いながらたわいない話をする。お互いお喋りな方ではないので話が弾んだとは言い難いが、桜はこれくらいが心地よかった。

「そろそろ帰るね。今日はありがとう」
「……送って行く」

帰りはりんねが家まで送ってくれた。霊道を使えば早いのだが、何故か今日は霊道を使わなかった。夕陽を背に、りんねと並んで歩く。ふと下を見ると2人の影が繋がっていた。桜はなんだかそれが恥ずかしくて、嬉しくて、でも影は繋がっているのに自分の手は繋がっていないのがなんだか寂しかった。

「六道くん、ありがとう」
「こちらこそ、来てくれて……嬉しかった」

恥ずかしいのか少し目を逸らしながら言うりんねが何故だかとても愛しく感じて、桜は花が咲いたように笑う。りんねの顔が少し赤らんでいるのに桜はまだ気づいていない。

「そんなこと言ってもらえて嬉しいよ。また明日ね、六道くん」
「ああ、また……明日」

帰っていくりんねを見送りながら、桜は書きかけのラブレターを思い出した。いつか渡せるといいなと思いつつも、これからもずっと書き綴っていきたいと思った。


130523



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