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「ねえねえ父さん、昔話をしてよ!」

ベッドに横になり、昔話をせがむ少年を愛おしそうに見つめながら金髪の男は少年のリクエストに応えた。

昔々、夜空に2つの月が輝く世界、1人のお姫様がいました。お姫様は国始まって以来の美姫と呼ばれていました。それ程までに美しかったのです。
そんなお姫様は案外お転婆で、16歳の誕生日にお城の外へと抜け出して、とある劇団に自分を誘拐してくれ、と頼みました。しかし、その劇団は自分を誘拐しようとしていた盗賊だったのです。
お姫様はその盗賊の中にいる一人の男や他の仲間たちと一緒に世界を旅しました。その旅は世界を救う旅にまで発展しました。

そこまで話をすると男は一息ついた。少年は続きを待ちきれないとじれったそうに男を見上げた。

「それで、お姫様はどうなったの?」

男は少し目を丸くした後、どこか懐かしむように目を細めて続きを話した。

おいおい、こういうのはいろいろあって…。まあいっか、お姫様は仲間たちと一緒に無事世界を救うことができました。お姫様は一緒に旅をしているうちに、その盗賊の男に恋をしました。

そこまで話すと男の話は終わった。

「それで?」
「うん?これでもう終わりだよ。」
「なんで、それだけなの?」
「続きは自分の目で確かめればいいさ。この不思議で、それでいて素敵な、お伽話をな」
「うーん、よくわからないよ」
「もうちょっとしたらわかるかもな。さあもうおやすみ」

少年はどこか納得のいかない様子だったが、しぶしぶといった様子で眠りについた。
男が部屋をそっと出て廊下に出ると、美しい女性が立っていた。

「ずいぶんと懐かしい話をしていたのね」
「聞いてたのかい?」
「ええ、最初っから」
「そっか、中々良い出来だったろ?なんたって今日は君の誕生日だからさ」

そういうと男はひざまずき、女性の手をとった。

「それでは、王女様。今からわたくしめがあなた様を誘拐させていただきます」
「あら、じゃあお願いしようかしら」

女性は幸せそうに笑った。



130115
Happy birthday!



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