「ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデーディア、ジタン。ハッピーバースデートゥーユー」
ジタンがケーキの上に乗ったロウソクにふっ、と息をかけて消す。すると辺りは真っ暗になった。暗闇の中向かい合うジタンと私、なんていうシチュエーションに不覚にも胸が高鳴った。いつもなら恥ずかしくて言えないことだって、今この暗闇の中、ジタンの顔が見えない状態なら言えるかもしれないと思った。ジタンは誕生日なんだし、たまには恥ずかしがらずに気持ちを表現したいと思った。
「ダガー?電気……」
「ねえ、ジタン。」
「……どうしたんだい、ダガー。」
いざこうして話を切り出そうとするとどうしようもなく恥ずかしい。ジタンの顔は見えないけれど、ジタンが私のことをじっと見ていることは空気で感じた。
少しの間沈黙があった。ジタンはその間ずっと私を見て何も話さず待っていてくれた。ジタンはそういう人だった。相手のことを急がせず、ちゃんと待っていてくれる。旅をしていた時だって、いつだって、ジタンは私のことをちゃんと見て待っていてくれた。そんなジタンだから、私は好きになったのだ。
私もジタンのことを見ている。ジタンが私達のことを見ていてくれたように、私達もちゃんとジタンのことを見ている。暗闇の中だろうが、ずっと見ていたジタンのことを感じることができる。私はジタンの目をしっかりと見て口を開いた。
「……誕生日おめでとう、ジタン。」
「ありがとう、ダガー。」
「あのね、ジタン。笑わずに聞いてね。私、ジタンのことをちゃんと見ているわ。大好きよ、ジタン。」
ジタンは最初きょとん、とした顔をしていたのが、しだいに嬉しそうに笑ったのが暗闇の中でもわかった。ねえジタン、大好きよ。いつか暗闇の力を借りずに言えるようになるまで、それまで私のことを見て待っていてね。
120909
ジ誕おめでとう。
気持ちだけはこめました。