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秋も何時の間にやら過ぎ、もうすぐ冬になろうというころ。ダガーはぼんやりと窓辺に揺れる木を見ていた。
何度この木を見ただろうか。この木はいつもこのくらいの時期になると、どんどん葉が落ちていき、最後には禿げてしまう。そんな木を今まで何度眺めただろうか。
それだけ自分は年をとったのかもしれない。ダガーはため息をついた。

「どうしたんだい?浮かない顔しちゃってさ」

ジタンだ。手にはティーセットを持っている。

「あら、ジタン。どうしたの?」
「たまには王女さまと一緒にお茶でもしようかと」
「あら、ありがとう。でもわたし、もう王女なんて年じゃないわ」
「いや、オレにとったら永遠にダガーは王女さまさ。アールグレイでいいかい?」
「またそんなこと言って。あなたはちっとも変わらないのね」
「そりゃそうさ、オレはオレだから。砂糖は2杯でいいかい?」
「ありがとう。2杯がいい」

昔は彼の一挙手一投足にいちいちどきまぎしていたけれど、最近はこうして軽くかわすこともできるようになった。
部屋にはジタンが紅茶を入れる音が響く。ジタンが砂糖を2杯か聞いてきたのは、自分がいつも2杯入れているのを覚えていてくれていたのだろうか。もしそうだとしたらとても嬉しい。
紅茶を飲む時、いつもジタンはアールグレイを持ってくるし、わたしはいつもダージリンを持ってくる。ジタンはいつもお砂糖を1杯入れるし、わたしはいつも2杯入れる。そういうところは年をとってずっと一緒にいるのにお互い変わらない。そのことがダガーをひどく安心させるのだ。

「たまには外に出てデートでもしないかい?」
「本当に、今日は急にどうしたの?」

そう言ってダガーはくすくすと笑う。今日のジタンはやけに積極的だ。まるで、そう、昔に旅をした時のような。

「行く?行かない?」
「そうね。あなたがしっかりエスコートしてくれるのなら」
「そりゃあもちろん、あなたさまをしっかりエスコートさせていただきますよ、王女さま」

そう言ってジタンはダガーの手の甲に唇を落とした。それが何だか自分達の最初の出会いを思い出させてダガーの胸はほわりと暖かくなった。


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