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「ジタン!あのね、ジタン。今日はハロウィンでしょう?」

今日はアレクサンドリア城でハロウィンパーティーが開かれる。今頃はクイナ達がパンプキンパイやらを焼いているだろうし、スタイナーやベアトリクスは広間の飾り付けに勤しんでいた。もちろんオレやダガーだって例外じゃなくて、オレは飾り付けの手を止めた。

「どうしたんだい、ダガー?」
「トリックオアトリート!」
「え?」

まさか今言われるとは思っていなかった。オレはダガーのためにダガーの好きな桃色プディングを用意しようと思っていたが、残念ながらまだ出来ていないのだ。パーティーまでは時間がある。パーティーまでに作ればいいやと先に広間の飾り付けをしていた。
しかしこのままやられる訳にもいかないので、オレはそっと口角をあげてダガーの耳元で「トリックオアトリート」と囁いた。
ダガーは顔を真っ赤にしながら「私が先に言ったのよ!」なんて騒いでいた。そんなところも可愛い。

「ない?ないなら悪戯……」
「もう!手、出して」
「あれ?」

オレの出した手の上にバラバラと落とされるキャンディ。てっきり持っていないと思ったのに持っていたらしい。オレの手の平にはカラフルなキャンディが積まれた。

「あげたわよ。ジタンは?持っていないのかしら」
「ははは……」

正直悪戯でごまかせると思っていたのに今日のダガーは一枚上手だ。ダガーは嬉しそうに笑った。

「じゃあトリックね」
「仰せのままに、王女さま」

まあダガーに悪戯されるのなら悪くない。そんなことを考えていたらダガーはマジックペンを取り出した。

「えーと、何するの」
「ジタンの顔に落書きをしようと思って」

「これも立派な悪戯よね?」なんてニッコリ笑って言うダガー。なんだか今日のダガーはいつもと違う。しかしお菓子を所持していなかったオレが悪いので甘んじて受けた。ペン先が少しこそばゆい。

「何書いてるんだ?」
「ええと、額に肉って。あと頬っぺたに渦巻きでも書こうかしら。鼻の頭にそばかすつけるのもいいかもしれないわ!」
「そんなに書くのか……」

別に書かれるのが嫌な訳じゃない。書かれたい訳でもないけど。しかし色気のある悪戯とかを想像していたオレは少し落ち込む。そんなオレの顔にダガーはペン先を走らせる。結構顔と顔の距離が近いから、まあ役得かと納得した。

「書けた!あと仕上げに」

そう言った後ダガーはオレの唇に自分の唇をふわりと重ねた。くっつくかくっつかないかくらいのキスはきっとダガーの精一杯。ダガーからのキスなんて滅多にないそれにオレは柄にもなく真っ赤になった。ダガーも同じくらい真っ赤で、恥ずかしいのか走ってどこかに行ってしまった。

「ジタン!桃色プディング作るアル」
「そ、そうだな!」

突然どこかからやって来たクイナに少し吃りながら返事を返す。桃色プディングを作ったらお茶目な王女さまを追いかけで存分にお返ししてあげようなんて考えながら。


仕上げはもちろん(あまいあまい口づけを)

「ジタン!先に顔洗って来るアル」
「そ、そうだな!」


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111027/title:Largo
フライングハッピーハロウィン!



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