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おれは筋肉。一般的には上腕二頭筋って言われる部位らしい。そんなおれのご主人はジタン・トライバル。ご主人は手の届くものは皆助けるってモットーと共に体を鍛えてる。だからおれもそんじょそこらの筋肉には負けないくらいたくましい自信がある。
そんなご主人に最近彼女ができたらしい。一国の王女、いや、もう女王か。ガーネット・ティル・アレクサンドロス17世。ご主人はダガーって呼んでる。美姫って表現がピッタリですごく可愛い。でも少しお転婆だ。
ご主人はオヒメサマを意地でも守りたいらしくて、オヒメサマと出会ってからトレーニングが増えた。

「ジタン」

ああ、オヒメサマの声だ。おれたちがびくんと反応する。心臓のやつはシャイだかなんだかしらないが呼ばれるだけでつい激しく鼓動をしてしまうらしい。
ご主人は自慢じゃないが結構女遊びが激しかったから、おれもいろんな女の子を抱きしめてきたと思う。でもオヒメサマを抱きしめる時にはやっぱり強張ってしまうのがわかる。あんなに厳しいトレーニングを積んできたのにおれってなんて情けないやつなんだ。
おれたちみんながあのオヒメサマに骨抜き、いや、筋肉だから肉抜き?まあ何でもいいけどなってるのだからオヒメサマに声をかけられてご主人が平気な訳ない。表情筋のやつが頑張って普通の顔をしてるけど、内心は飛び上がるくらいに嬉しいに決まってる。ご主人は案外可愛いやつなんだ。

「どうしたんだい、ダガー」
「ううん、何でもないのだけれど……」

オヒメサマはそっとご主人に寄り添った。こうして来ることは珍しいから多分久しぶりに甘えたかったのだろうと思う。しかしおれたち全身は寄り添われた瞬間情けないことにギシッと強張ったことがわかった。
しかしせっかく寄り添ってくれているのだからこの美味しい状況を逃す訳にいかない。オヒメサマのあの左肩を何としてでも引き寄せるのだ。周りの他の筋肉がおれたち左腕を応援してくれている。
おれたちは恐々そろそろとオヒメサマの左肩に手を伸ばす。左手の平がオヒメサマの左肩に触れて、絶妙な強さでこちらに引き寄せた、と自分では思っている。
ご主人もオヒメサマも幸せそうな顔をしていた。服の下にいる筋肉達は顔を見たいとブーブー文句を言っていたが、おれたち服に埋もれてない組がなんとか収めておれ達は眠りについたのだった。



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お題元:夜風にまたがるニルバーナ



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