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いつだって会いたかった。でも、会えなかった。わたしはお城での仕事が忙しいから、城の人はわたしが外に出ることにあまりいい顔をしなかった。
会いたい、会いたい、会いたい。こんなにも会いたいのに会いにいけない自分に腹が立つ。思わず涙がこぼれて、涙の海に溺れた。
ジタンが会いに来てくれたらいいのに。でもわかってるの、ジタンも忙しいって。ジタンがいつも忙しいのに、抜け出して来てくれるって。

「月が味方をしてくれるんだ」

ジタンは笑いながらそう言った。
ジタンはこうやって来てくれるのに、心の中では会いに来てくれてとても嬉しいのに、素直になれない。

「最近忙しそうだけど大丈夫かい?なんだか顔色も悪いみたいだ」
「べ、別に大丈夫よ」
「そっか、ならいいんだ」

嘘。本当は早くジタンに逢いたいから毎日お仕事頑張ってるの。それで最近ダイエットを始めたから…。

「じゃあ、そろそろ帰るよ」
「もう帰るの?」

まだ帰って欲しくない。勇気をだしてジタンの額に触れる。

「久しぶりに外を歩きたいわ」

ジタンは驚いた顔をしてる。ああ、また失敗したわ。空回ってばかり。でもなんだかんだジタンはわたしの言うことを聞いてくれる。ああ、困らせてごめんなさい。
2人で歩くアレクサンドリアの城下街。ゆらゆらと揺れる影をわざと踏んで歩いてみた。影のジタンとわたしの距離は少し遠い。影だけでも体より近づいたらいいのに。

「なんかお腹、すいたな」

なんか食べる?というジタンにちょっと待って、と制する。確かポケットに…

「これ、美味しいのよ」
「…ビスケット?」

ダイエットしてるけど、どうしても甘いものが食べたい時はこれを食べるの。とっても美味しいのよ。

「そうよ、はい」

ビスケットを半分に割ってジタンに差し出す。1枚のビスケットを2人ではんぶんこ。ジタンはビスケットを口に入れた。

「ほんと、うまいな!」

そう言ってジタンは笑う。

「ふふ、でしょう?」

わたしも笑ってそっとジタンの手を掴んだ。ジタンは少し目を大きくしたけど、またふわりと笑顔を浮かべてわたしの手を握り返してくれた。
わたしの想いがこの手から届いたら、どれほどいいかしら。

「心配しなくても、好きだよ」

ぽそりと呟いたジタン。わたしは嬉しくなって思わずジタンに笑いかけた

繋がった2つの影がアレクサンドリアの城下街を歩いていった。


ビスケット
(好きなところ、100個以上言えるから)


―――――
YUKI/ビスケット

イメソン企画お礼に置いてたもの





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