僕とベルがライモンシティをうろついていると、偶然にもトウヤとトウコちゃんに会った。トウコちゃんの話はトウヤからよく聞いていて、なんでもギアステーションで出会って、それからよく一緒にマルチトレインに乗るくらいの仲らしい。トウコちゃんは僕らを見かけると、トウヤとバトルするから見届けてくれ、なんて言うから、トウヤの話から察するに2人は両思いだと思うのだけれど、二人は相当なバトル馬鹿らしい。
「じゃあ3対3ね!手は抜かないでよ!」
「わかってるよ」
ベルは二人のバトルをワクワクしながら見ていたけれど、僕は何となくトウヤが勝つ気がした。現に今だってトウヤの方が優勢だ。
トウヤは強いし、バトルのセンスがある。去年3人一緒にポケモンを貰ったはずなのにトウヤには全く勝てなかったから、僕には何となくわかる。あれからずっと僕はトウヤに勝てないし、トウヤはどんどん強くなるけど、僕はいつか必ずトウヤは倒したいと思う。去年は英雄と言われたトウヤだけれど、チャンピオンにだって勝ったトウヤだけれど、夢を諦めたくなんてない。
「あっ!」
ベルが声をあげたのを聞いてトウヤとトウコちゃんのバトルを見ると、トウヤのダイケンキがトウコちゃんのエルフーンにメガホーンを放っていて、トウコちゃんのエルフーンはパタリと倒れた。
「また負けた!悔しい……」
そんなことを言って落ち込むトウコちゃんを見るトウヤの目はとても優しげで、やっぱりトウコちゃんのことがすきなんだと感じる。トウコちゃんの目にはほんのり涙が溜まっていたから、トウコちゃんを慰めるとすごい勢いで睨んできた。そんな不器用な英雄のために僕は一肌脱いでやろうと思う。僕だってベルと二人でいたいしね。
「そうやってバトルばっかりやるんじゃなくて、たまには息抜きでもしたらどうだい?」
そう言って遊園地のペアチケットを渡すと二人は顔を見合わせて急に真っ赤になった。トウヤもトウコちゃんも色に例えると透明だと思っていたけれど、案外カラフルなのかもしれない。ベルの手を引いてその場を去った後ちらりと振り返ると、トウコちゃんの笑った目からはさっき溜めていた涙が溢れおちていて。透明でとても綺麗なそれを溢れさすのはトウヤだけなのだと思った。
「ねーチェレン」
「なに?」
「あの二人、上手くいくといーねぇ」
「……そうだね」
colorful
(110918)