雑記 | ナノ
ジタガネ



目の前のグラスに入ったバーボンが揺れ、氷がからん、と乾いた音を立てた。ジタンはグラスを手に取ると一気にそれを煽った。ジタンがこんな行動に出ているのは誰でもない、ダガーのせいだった。
ブラネが死んで、ダガーはアレクサンドリアの女王になった。ダガーとの身分の差があることは自分できちんと理解しているつもりだったが、実際目の前に突きつけられて自分は何もわかっていなかったということに気づいた。
ダガーがいないと1日が始まらない。
それが自分の本心だった。女王という遠い手の届かないところに行ってしまったダガーを見ると、自分はどうして期待をしてしまったのだろうと思うことがあった。彼女も自分のことを好いていてくれるなんてどうして思ってしまったのだろう。そんなことを考えながらもう何杯目かわからなくなってしまったバーボンを煽る。体がカッと熱くなって頭が少しくらくらした。もう全てがどうでもよくなった。机に突っ伏すとヒヤリとして心地よかった。こんな気持ちになったのは初めてだった。
ジタン、とダガーの声が聞こえた気がした。とうとう幻聴まで聞こえるようになったのかとジタンは自分を笑った。少し元気が出た自分がとても現金だと感じた。
やっぱり諦めきれない。
ジタンは最後のバーボンを飲み干すと立ち上がる。ジタンの目にもう迷いはなかった。


即興小説。お題は不屈の目で必須要素がバーボン


20130415/06:51