<優しさ>

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「いつからそこにっ。というか、さっきの聞いて...。」

「すまないが聞こえた。」

顔色一つ変えないで、ミホークは先程座っていた椅子へと腰を下ろした。
できれば何か反応はして欲しいものである。無反応といことが、余計に名前を恥ずかしくさせた。

「あのね、これは...そのっ!」

「説明はいい。ずっと前から知っていた。」

「えっ!?」

「俺たちの付き合いは長い。名前、どれだけ一緒にいると思っているんだ。」

つまり、自分のシャンクスに対する思いはバレバレで、ずっと知っていたけど黙っていたと。そう話した彼の顔は、どこか笑っているようにも見える。

「お前らの気持ちには嫌でも気付く。」

ミホークは目の前にあった酒を口に運ぶと、ゴクゴクと喉を鳴らしながら飲み干した。ちゅぽんっと飲み口が離すと、じっと名前のことを見つめながら、その場に立ち上がった。

「約束は無かったことにしてもらおう。用を思い出した、帰る。」

「ちょっと待ってよ、ミホーク。」

「いい酒だった。」





ミホークはあのまま海へと消えていった。
変だと思ったんだ。ミホークからこの船に訪ねてくることなど、滅多にないからだ。それに加えて25日のクリスマスは空いているか、と聞いてくるのだ。


「久しぶりだな。相変わらずのようだ。」

「ミホーク!どうしたの急に。」

「25日、せっかくのクリスマスだ。一緒に過ごさないか?と思ってな。」

「本気?うん、まぁ...空いてるけど。」


それからすぐのシャンクスの訪問。今まで一度も二人から言われたことのない、クリスマスの誘い。

「彼には全てお見通しってわけね。私たちはこれからどうする?シャンクス。」

名前はシャンクスを見つめる。まだ気持ち良さそうに寝ているみたいだ。ゆったりとした、この時間が心地よい。





「あれ...鷹の目は?」

気が付くと目の前に名前がいた。が、鷹の目の姿が見えない。どこへ行ったのだろうか。

「ミホークなら帰ったよ。」

「そうか...。」

嫌なくらい気が利く奴だ。借りができちまったな...。全部が終わったら、鷹の目に会いに行こう。あいつが好きな酒を持って。

「なァ...名前。」

「なぁに?」

「お前の25日、俺にくれないか?」

名前が好きなんだ。鷹の目の力を借りなきゃ、前に進めなかった情けない俺を笑うか?
お前が大切で大切で仕方がない。だからこそ、今まで言えなかったんだ。言い訳染みているかもしれない。だけど、それだけは分かって欲しい。

「もう...仕方ないなぁ。」

「よっしゃ!」

俺は見えないように、小さなガッツポーズをした。鷹の目、お前のおかげだ。お前の助けがなかったら、この喜びは無かっただろう。感謝している。

「その日の予定は俺が貰った!!」





広い青い海に漂う、小さな船。大きな黒剣が赤い夕陽を受けて、鈍く光っている。

赤髪はちゃんと言えたのだろうか。名前のほうも応えることができたのだろうか。気にはなるが、あの二人のことだ。もう余計な心配はいらないだろう。

「世話のやける...。」

ミホークの口角が小さく上がる。
関係が崩れることに二人とも遠慮していたようだが、間に挟まれた自分の身にもなって欲しいものだ。やっと肩の荷が下りる。

「不器用な奴らだ。」

どこまでも続く赤い地平線を見つめながら、ミホークはポツリと呟いた。






数日後。仲良く手を繋いだ二人がプレゼントと酒を持って、ミホークのもとを訪れたのは言うまでもない。

不器用な男の、友の手を借りた恋の駆け引き。



Fin.





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