<私を船に乗せて>

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「早めに病院へ行け。
医者に診てもらったほうがいい。」

ローはポケットから札束を取り出すと、何枚ものそれを名前に手渡した。

(これでどうにかしろってこと?)

解決したと思ったのか、立ち去ろうとするローに名前は待ちなさいよ!と声を荒あげた。

「お金だけ置いて、さよなら?冗談じゃないわ。私はここで働いているの!商売道具の顔まで傷つけてくれちゃってその上、歩けないですって!?」

ローから漂う威圧感が苦しかったが、こんなチャンスはもう二度と無い。
なんとかして船に乗せて貰わなければ。

狙った男は絶対に落とす。それは、名前のプライド、そのものだった。

「私に会うのを楽しみにしているお客さんはいっぱいいるの!こんな紙切れじゃ、全然足らないわ。」

あまりの啖呵にローは困り果てた顔をして、小さな溜息を吐き出した後、じっと名前のほうを見た。

「俺にどうしろと...?」

「私を船に乗せて。」





あの時のことは、今思い出しても面白い。ローの驚いた顔と、店主の今にも逝きそうな顔。

「ま、無理もないわね。」

あの店は私の力で盛っていたんだから、と名前は自信たっぷりの笑みを漏らす。

きっと潰れるのも時間の問題。だが、島を出た私にはそんなことは関係ない。

「ふふ...」

神の存在など信じたりはしないが、あの時のことばかりは神に感謝した。

変化のないチヤホヤされる毎日には、もう飽き飽きしていた。それが、ひょんなことからいい男に出会い、尚且つ島から出れたのだから。島を出るという願いは叶った。
残る願いはあと一つ。

冷徹な空気をまとう男、トラファルガー・ロー。彼を手に入れるだけだ。

女たちを魅了し、誘ってきたであろう、その身体つき。頭の先から足の先まで舐めまわすようにじっくりと見る。見れば見るほどその淫妖な色気が感じられ、名前を挑発する。

乱れる貴方がみたい

さらっと攻めるのがいいのかしら?
ねっとりと攻めるのもいいわね

焦らせて焦らせて

ねぇ、どんな表情をするの?
貴方を服従させる、きっと愉しいでしょうね。





「船に女は乗せねェ主義だ。」

「あら、随分な口ね。JOKERについて知りたくないの?」

ローの顔付きが変わった。
もちろん私はJOKERが何なのか、全く知らない。ただ彼の持っていた紙に書かれているのが見えたから、それを言ってみただけだ。

「私を船に乗せて。足が無事に治ったら教えてあげる。貴方、医者なんでしょう?」

「......ちっ。」

「決まりね。私は名前よ。よろしく、トラファルガー...」

知らないことがバレるときっと船を降ろされてしまうだろう。相手は仮にも残虐な海賊。殺されてしまうかもしれない。
が、落としてしまえばそんなこと関係ない。いつもの様に甘い声で誘う。

「抱いて船まで連れていって。」





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