<細身の男>

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「ちょっと待って、レイリ―!」

「オークションは終わりだ。金も盗んだし...な。」

「そんなことより、手掛かりをっ!」

スタスタと歩くレイリーの後ろを、名前は必至でついて回っていた。

「そう焦るんじゃない。」

「10年!10年探し続けても、何の情報もないのよ?」

レイリ―は幕を通り抜け、会場のほうへと足を踏み入れた。続けて名前も会場へ足を踏み入れる。
依然として慌ただしい足音や悲鳴が聞こえていたが、会場へ足を踏み入れることによりその理由がすぐに分かることとなった。

「なっ......。」

天竜人は血を流し倒れており、真正面には麦わら帽子を被った男。ステージには手枷のついた人魚。

(人魚...........。)

確かに人魚はその希少価値から、高く売れると聞いたことがある。しかし、これほどの戦いを起こす理由が彼女にあるのだろうか?
レイリーは魚人に話かけながら、状況の把握を行っている。

「つまり―――成程。お前達が助けてくれたのか。さて.......。」

そして次の瞬間、会場にいるほとんどの人間が気を失い、バタバタと倒れていった。この光景に驚く者たちをよそに、レイリ―は話を続ける。

「その麦わら帽子は...精悍な男によく似合う。」

(......麦わら帽子!?まさか!)

「会いたかったぞ、モンキー・D・ルフィ。」

名前は中央にいる、麦わら帽子を被ったルフィを見た。

(彼が...シャンクスが言っていた...。)

シャンクスは事あるごとに、その少年の話を嬉しそうにしていた。

(やっと会えた...。)

シャンクスは、なぜ片腕がないのかその理由を教えてくれていたし、何よりとても彼のことを嬉しそうに話していた。だから、名前はルフィという男にいつか会いたいと思っていた。
視線をレイリ―に戻すと、レイリ―は他の海賊らしき者たちとも話をしていた。そんなとき、何か強い視線を感じ、名前はそちらのほうを向いた。

「.........!」

なぜだか分からないが、名前はその男に惹きつけられた。偉そうに椅子に腰を掛けている顔が整った細身の男。ツナギを着た男達に囲まれて、その後ろには白いクマもいた。

ドキーーーーーッ。

時が止まってしまったかのように、名前は視線を逸らせなくなった。そして細身の男、トラファルガー・ロー自身も、名前から目を逸らすことをしなかった。
名前の美貌に魅了されたことも理由としては少しあるが、それは男なら誰でもそう感じるのが普通である。本当の理由は名前の首のアザだった。

(あのアザ...まさか.......。)

彼は何かを企んでいるような、そんな不気味な笑みを浮かべる。その時、外から海軍たちが、犯人は出て来い!と声を荒げているのが聞こえてきた。

「直に大将が到着する!ルーキー共、どうなってもしらんぞ!」

それに対し反応するルーキー達とレイリー。

「完全に共犯者扱いだな。」

「今、大将とぶつかるのはゴメンだ。」

「私も住み辛くなる。先に行かせてもらうぞ。」

どうやら目的は一致しているようだった。

「もののついでだ!助けてやるよ!表の掃除は、しといてやるから安心しな。」

カツンカツンと金属が、建物の床を蹴る音が響く。ユースタス・キャプテンキッド。彼もルーキーのうちの一人。実力は未知数だが、その懸賞金からして相当なものなのだろう。
キッドのその台詞に怒りを覚えた、ルフィとローはその後を追った。
残された彼らの仲間達は、やれやれといった風に脱出の準備を進める。

「名前、君はどうする?」

レイリーが名前に話かける。その彼の肩には怪我をした魚人がもたれかかっていた。

「ニュ〜...その首のアザ...呪われた子なのか?」

「........っ!」


そう呼ばれるのは久しぶりだった。あれから20年経った今でも、呪われた子という呼び名は存在する。
あまりに突然に呼ばれたその名に驚き、名前は答えることができなかった。

「こら、ハチ。今はそんな話をしている場合じゃない。」

「すまねェ......。」

「名前。行く宛てがないのなら、君も13番GRに来るといい。」

「わかった、ありがとう。レイリー。」

外ではすでに、ルーキー達の暴れる音が聞こえていた。

「「「よし!行くぞ」」」

それぞれの海賊の一味とともに、捕らえられていた男や女たちも含め、建物から脱出することになった。





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