<宴>

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「おおー!やっと来たか。」

「待ってたぞー!名前!!」

「さすが、綺麗だな。いい女だ。」

お酒を飲み、陽気になった船員たちが誕生日おめでとう!と次々に声をかけてくれた。名前は一人一人にありがとう、と声をかけながらシャンクスの元へと進む。彼はたくさんの船員たちに囲まれて酒を浴びるように飲んでいた。

「よし、来たな!」

名前の姿が見えたのを確認すると、口から垂れた酒を腕でふき取りシャンクスが声を荒あげる。

「「野郎ども、宴だァ!」」

「「さァ、飲め!」」


“お頭、もう飲んでるじゃねーか!”と、船員たちの突っ込みが入ると違ェねぇ!と他の船員が声をあげた。船の上に笑い声が響く。

「細かいことは気にするな!飲むぞ!」

子供扱いして、真っ正面から自分を見てくれないシャンクスに名前は少し苛立っていた。が、船員達と笑い楽しそうに話すところを見ると、やっぱり好きだとそう感じずにはいられない。

(シャンクス.......。)

あなたが振り向いてくれる日は来るの?私はただの子供?私はずっと傍にいてもいいの?それとも一緒にいるのは責任感から?

「おーい!名前。こっちに来い。」

「一緒に飲もうぜ!」

シャンクスを見つめながらその場に立ったままの名前に、あちこちから声がかかる。

「今日の主役なんだ、飲めよ。」

「何、突っ立ってたんだ?」

「今日は格別に綺麗だな!」


たくさんの男たちがお酒に食べ物を手渡してきては、声をかけていく。その笑顔が、陽気さが名前の抱いた負の感情を消し去っていってくれた。

「ありがとう、みんな!」

この宴はその後、この勢いのまま何時間も続いた。日付が変わろうとした頃にはだんだん落ち着き始め、中にはその場で寝る者も出てきている。名前を取り巻いていた船員たちも徐々に勢いを無くし、静かに談笑し始めていた。

(シャンクスは...)

名前が辺りを見渡すと、シャンクスの姿が消えていた。

(あれ?シャンクスがいない...)

「ちょっと席を外すね。」

そう周りの船員たちに声をかけると名前は2つのグラスにお酒を注ぎ、船の手すりに身を寄せるベンベックマンの元へと向かった。

「ねぇ、ベン...。」

「名前...どうした?」

手に持つグラスを1つ手渡し、同じように手すりに身体を預ける。そして一口だけ飲むと重い口を開き問いかけた。

「シャンクスは...私のことどう思ってると思う?」

一人の女として見てる?それともただの子供?

「どうって...。」

唐突な質問にベックマンは口籠る。副船長という立場でもある彼は、以前にもシャンクスからの相談を受けたことがあった。名前の気持ちも彼女の行動を見ていれば、すぐに分かる。
ここで本当のことを言えば、二人の距離は縮まるかもしれない。しかし、それでは船長の顔に泥を塗ることになる。そう判断した彼は、彼女の問いに対してこう返した。

「お頭本人に聞いてみたらどうだ?」

「きっと教えてくれないよ。」

「本気で聞けば答えてくれるさ。」

「...........。」

「あの人はそういう人だ。」

ベックマンは大丈夫だ、と俯く名前の背中を押した。そして船長室にいるからとシャンクスの居場所をそっと教えてくれた。

「自分に自信を持て。」

「...え?」

「お前は十分綺麗だ。」

普段から口数も少ないベックマンだが、落ち着いた雰囲気からくるものなのか、彼の言葉からは一つ一つ重みを感じる。自信が湧き出てくるようなそんな気がした。

「ありがとう、ベン...。今から行ってくる。」

ベックマンの言葉に勇気をもらい、名前は船長室のドアノブに手をかけた。








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