仲間というもの

「……」

 目を徐々に開けていくと見えるのは見慣れたメンバー。
 スウィートは完全に目を開き、そして体を起こす。
 頭がようやく覚醒してきて、1匹足りないことに気付く。辺りを見回してみるとシルドは既にいなかった。もう行ってしまったのだろう。

(早いなぁ……)

 まだ少しぼんやりする頭でそんなことを考えながら、スウィートは外を見た。

 もう既に太陽は昇っているようだ。また見れなかった、とスウィートは少し凹むが、すぐに気持ちを切り替えて『シリウス』のメンバーを見る。
 スヤスヤと気持ちよさそうに寝息をたてて寝ている。アルもまだ寝ている。結構珍しいことだった。

「まぁ、色々と疲れは溜まってるよね……」

 あの未来からこっちにきてまだ2日目。1日では完全に疲れがとれなかったのだろう。まだそれが響いているという事だ。
 スウィートは「ふぁぁ……」と少々大きな欠伸をする。

「眠い……。とりあえず、今日は、どうしようかなぁ……」

 ヤバイ。何かすごくヤバイ。
 スウィートはそんなことを考えていた。ただ睡魔がまた襲ってきて戦っているだけなのだが。

「起きた、ばっか……」

 けっきょく睡魔に勝つことはできず、スウィートはぱたりとベットに倒れるように横になった。
 どうやら疲れが溜まっていたのは彼女も一緒らしかった。






「……ト。スウィート!」

 自分を呼ぶ声がして、スウィートは目を覚ました。
 目に映ったのはシアオ。周りを見るとフォルテもアルも起きていた。どうやら1番早く起きたのに、1番遅くなったらしい。

 スウィートは慌てて体を起こした。

「お、おはよう……」

「あぁ。もう昼すぎだからおそようだけどな」

「安心して、スウィート。ついさっきまであたし達も爆睡してたから。いやー、よく寝たわ〜」

「僕はまだ眠いけどねー……」

 それぞれ会話をする。
 どうやら全員が昼すぎまで寝ていたようだ。時間がないというのに呑気な探検隊であった。

「でもそろそろきちんと活動しないとね!」

「といってもどうすんの? “幻の大地”を探せって言われても……」

「……だよね」

 シアオはフォルテに撃沈された。仕方のないことだが。
 スウィートは苦笑し、「うーん」と考え出した。アルは2匹を完全に無視して考えているようだ。

「……といっても、情報が1つもなかったら推測もできやしないしな」

「あの、とりあえず海岸いってみない? その、気晴らしに」

 アルが難しい顔で考えているのを見て、スウィートはそう言った。
 少しはリラックスも必要だ。気を抜きすぎたら駄目だが、気を張りすぎても仕方ない。そう思ったのだ。

「あ、僕それ賛成! 行きたい!」

「そ、そっか」

 そんなに「行きたい」と強く言われるとは思っていなかったスウィートは、少したじたじになりながらも返事した。シアオは目をキラキラ光らせている。
 チロッとフォルテとアルを見ると別に嫌そうな顔はしていない。「別にいってもいい」と気持ちなんだろう。

 スウィートは少し苦笑混じりで言った。

「じゃあ、いこうか」






――――海岸――――

 一昨日ぶりに来た海岸はやはり何も変わっていない。
 海はキラキラと太陽の光で輝き、とても綺麗だ。風景も別に変わったところもない。

「……どうしようかねー」

 シアオが海を見ながら呟く。他の3匹もだ。
 とりあえず海岸に来てみたが、何も思いつかない。どうやって調べるかといってもそれが難しいのだ。

「“幻の大地”ねぇ……。アル、アンタなんか知らないの?」

「無茶振り言うな。シルドが知ってないのに何で俺が知ってんだよ」

 アルの言い分は最もである。それでもフォルテは何やら言っているが。

「うぅ……。やっぱシルドの意見も聞いとけばよかったかなぁ」

「今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ」

「とりあえずゴーストタイプがいなかったらいいんだけど……」

「フォルテそれ関係ない」

「余計すぎる」

「うっさい! あたしにとって大切なの!」

「アハハ……」

 フォルテの言い分にシアオとアルがツッコむ。そしてフォルテが怒鳴ったが、2匹はしれっとしている。スウィートはやはり苦笑い。
 こういうのはいつも通りな感じでスウィートは好きだった。そんなにのんびりしている訳にもいかないのだが。

(やっぱり情報が少なすぎるよね。……でものんびりもしていられない。絶対にあんな未来にしちゃいけない。……そのためには)

 スウィートは息を少しはいた。
 そして決心したようにシアオ達の方を向く。3匹はまだ考えているようだ。話が脱線しながらだが。

「あの……」

「ん? どうかした?」

 視線と声に気付き、シアオがスウィートの方を向く。フォルテもアルも。
 スウィートは少しだけ躊躇ったが、きちんと言葉にした。

「私、やっぱり皆の協力が必要だと思うの」

「え、うん」

 いきなり話されて何のことか分かっていないようだが、シアオは頷く。フォルテも首を傾げている。アルはもう察しているようで、少し険しい顔をしているが。
 言って何かになるだろうか、そう思いながらスウィートは言葉を紡いだ。

「だから…………ギルドに行こう」

「うん…………はっ?」

「え?」

「…………。」

 シアオとフォルテは目を丸くし、アルは表情をかえない。やはり予想していたのだろう。
 すると数秒してから

「え、えぇぇぇえぇぇ!? ギルドに行く!?」

「そ、そんなに驚かなくても……」

 あまりのシアオの驚きっぷりに、スウィートはビビる。まさかそんなに驚かれるなんて思っていなかったのだ。
 アルも少し予想外だったが、フォルテが1番予想に近い。

「な、何で!?」

「え、だから皆の協力が必要だから……」

「いや、だって皆はゼクトのこと信用して、るんだ、よ……」

「自分で言っといて暗くなんないでよ、面倒くさい!」

 何故か凹みだしたシアオにフォルテが罵倒の言葉を吐く。それでもシアオの背後には暗いオーラがでていた。
 確かにフォルテの言うとおり面倒くさかった。スウィートはやはり苦笑いだが。

 すると黙っていたアルが発言した。

「シアオの言うとおり、この時間のポケモンはゼクトの言ったことを信じてる。逆にシルドは信用されてない。
 それに未来で見たことを言ったとしても、信用してくれる可能性は低い」

「それは、そうだけど……」

 スウィートはアルの正論に言葉を詰まらせる。

 確かにアルの言っていることは正しかった。
 こちらの時間ではゼクトが善人、シルドは逆で悪者だ。それにゼクトは絶対的といってもいいほどの信頼を得ている。
 逆にシルドは一度はお尋ね者として世間を知らしめた存在だ。ギルドでも捕まえようとした。ギルドでは悪者というレッテルをまだ貼られているだろう。

 それで信じろ、というのはあまりにも無謀すぎる。

 けれど、とスウィートはアルの方を、3匹を見た。


「けど…………けど、私は信じたい。ギルドの皆が信じてくれるって」


 今度は反論も何も帰ってこなかった。ただ場が静まり返った。
 シアオはパチパチと瞬きをして、フォルテは何やら考えているようだ。アルは少しばかり驚いているようだが。

 するとシアオが沈黙を破った。

「確かに……そうだよね。こっちが信じないと、絶対に皆は信用してくれないよね!」

 明るく、いつもどおりにシアオは笑って見せた。
 スウィートも同じように顔を笑顔にした。よかった、と心底 安心したような顔を見せた。

「確かにこのまま4匹でいくより大人数の方が効率いいしねー……」

「……じゃあとりあえず行ってみるか?」

 フォルテからもアルからも反論はこなかった。逆に賛成する声だ。
 スウィートは顔に思いきり「やった」というのを表現した。分かりやすい。

「うん!」

 そしてアルの言葉に、元気よく頷いた。




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