雷電の強者

「分かってる! とにかく数を減らすぞ!」

「了解! とりあえずラクライから倒していけばいいのかな!?」

「そうと決まればとっととやんなきゃね!!」

 スウィート、アル、シアオ、フォルテの順で話す。
 とりあえずアルはお得意の電気技は、ライボルト達の避雷針のせいで無意味となる。となれば他のタイプの技で攻めて行くしかないのだ。
 流石にアルには少しキツイ。

 『シリウス』は全員で作戦を確かめ合い、攻撃態勢に入る。
 確かめ合いも技を避けながらだが、まとまったところで攻撃に入る。

「(出来るだけ複数、攻撃できたほうがいいよね……)しんくうぎり!!」

「ぐぁっ!!」

「ぐっ!!」

「ナイス、スウィート! 火炎放射ッ!!」

 スウィートがしんくうぎりでライボルト達全員に攻撃し、その隙にフォルテが火炎放射でラクライ1匹を仕留める。
 スウィートが使うことで、特性の適応力が発動するのでしんくうぎりの威力はあがり倒しやすくなる。
 どうやらこのままいけば上手く倒せそうだ。スウィートは少なからずそう思った。

「かげぶんしん。……チッ、不便だな。アイアンテール!!」

 かげぶんしんをし、ラクライが戸惑っているうちにアイアンテールを打ち込む。

 アルはどちらかというと接近戦よりも遠距離戦を得意とする。だが電気技を使えないため、接近戦で攻める以外、方法がない。

「文句言ってる場合じゃないで、しょ! はどうだん!!」

 シアオも話してる場合ではない。他人の事を言えないのはいつもの事だが。ラクライの技を避けてからはどうだんを打ち込む。
 シアオも、リオルという種族はとくこうが高いので遠距離戦の方が有利だといえるだろう。本人がよく接近していくので分からないことだが。

「おのれ……! スパークッ!!」

「……ッ!? フォルテ、避けて!!」

「ヘッ!? ――ッ!!」

 ライボルトがすかさず少し気を抜いていたフォルテに攻撃を仕掛けていた。
 スウィートは忠告するも、避けられる距離ではない。

 誰かが技を仕掛け止められる時間は、ない。フォルテは反射的に目を瞑った。来るだろう痛みに耐えるために。
 だが

「ぐっ!?」

「アル!?」

 声が聞こえ、フォルテが目を見開く。見ると、アルが代わりにスパークを受けていた。
 いくら電気タイプのアルといえど、ダメージは受けてしまったらしい。

「ちょ、ちょっと! 何で庇ってんのよ!?」

「こっちの方が、効率がいい……。お前が受けるより、ダメージは半減される。――油断するな」

「ッ! わ、分かってるわよ!」

 フォルテが問うと、アルがもっともな答えを返した。
 アルの最後の言葉を聞くと、自分の失態にイラついたのか、適当に声を張り上げて返した。

「(回復させてあげたいけど……今、渡せる状態じゃない……)こうなったら……てだすけ!!」

 スウィートが技を使った瞬間、シアオ達の体が少しだけ光る。てだすけが効いた、という事だろう。
 シアオはスウィートの笑顔を見せてから

「ありがと! はっけい!!」

 ラクライに攻撃したがまだ倒れていない。
 お礼を言うところがシアオらしい、とスウィートは思いながらもシアオがはっけいで攻撃したラクライにアイアンテールをし、仕留める。
 これでようやくラクライが半分。
 ライボルトや他のラクライはしんくうぎりを受けただけでほぼノーダメージと言っても良いだろう。

「貴様ら……! スパークッ!!」

「何度もその手は喰らわない!」

 アルの時と同様にスパークをしてきたライボルトの攻撃をスウィートはかわす。
 だがこの攻撃はアルのときと同様ではなかった。

「いるのは我だけではない!!」

「スパークッ!!」

「(しまった……!!)うッ!!」

 ライボルトに気を取られすぎて、後ろにいたラクライに気付かなかったスウィートは、思い切りラクライの攻撃を喰らってしまった。

 苦痛に顔を歪めながらも、ラクライに攻撃しようとしたのだが

「う、そ……でしょ……っ!?」

「スウィート!? どうしたの!?」

 スウィートの様子を見て変に思ったシアオが声をかえた。
 だがスウィートは返事をしなかった。否、出来なかった。何故かというと体が痺れてしまったから。
 おそらくスパークの一定確率でなるまひ状態だろう。そのせいでスウィートは体が動かなかった。

「ふん、どうやらまひ状態になったようだな。でんこうせっか!」

「いッ!!」

 ライボルトが動けないスウィートに容赦なく技をくらわせる。
 勿論、避けられるはずもなく、スウィートの体は壁に打ち付けられた。だが体はまだ動かない。

(なんでこんな時に……! 動いて、動いてよ!!)

 スウィートが懸命に体に訴えかけるが、体は全く動かない。
 足手まといになると思うと、スウィートは悔しくて仕方なかった。
 シアオはそんな様子のスウィートを見て、何を思ったのか、一気にスウィートの方まで駆け出した。

「シアオ!?」

「何やってんだ、お前!?」

 フォルテやアルの声が聞こえるが、今のシアオはそんな事これっぽっちも聞いてなかった。
 とにかくスウィートに渡せれば……! それだけ思って走った。
 そしてシアオは少し近い距離から、何かを投げた。言葉と共に。

「スウィート! 何とか、それ食べて!!」

「……!?(食べてって言われても……!)」

 確実にシアオが投げた物はスウィートの方に向かってとんできている。
 その物は、かろうじて開いていた口に、見事に入った。

「んぐっ……ケホ、ケホッ! ……これ、癒しの種……」

「フンッ、スパーク!」

「うわぁッ!?」

 スウィートは飲み込んでしまったときに、喉につっかえたのか少しだけ咳をして落ち着いた。そのときにはもう体の痺れはない。
 スウィートが物の正体を確認している間に、シアオの体がこちらまでとんできた。

「きゃ……!!」

 キャッチこそ出来なかったが、シアオの体が壁にぶつかる事は防いだ。
 シアオがいた場所を見るとライボルトがいたので、どうやらライボルトの攻撃を受けたようだ。
 シアオの腹部には少し焦げたような痕がある。

「ご、ごめんスウィート! 大丈夫!?」

「だ、大丈夫……。シアオの方が大丈夫なの?」

「大じょ、いッ!!」

 シアオが慌てて退いて謝ってきた。
 何ともなさそうな顔をしているシアオにスウィートが尋ねると、シアオは笑って「大丈夫」と言おうとしたのだろうが、痛みがきて苦痛で顔を歪めた。
 どうやら無事ではないようだ。

「シアオ、無理しないで下がって……」

「だ、駄目! 僕だけ休んでるだけなんて! それにまだ一発しか喰らってないし……!」

 シアオは首を横に振って、頑なにそう言う。
 だがスウィートと違って、シアオが受けたスパークはライボルトのものだ。
 それを証拠に威力が強かったのか、シアオの腹部には焦げた痕がある。スウィートより重症だ。
 スウィートはそれを見て心配だった。
 それで怪我が悪化したらどうするつもりなのだろうか? そんな事になるくらいなら

「でも、シアオは休んでて。怪我が悪化したりしたら駄目だし――」

「それでも嫌だ! 別にこんな傷……どうってことない!」

 スウィートの言葉をシアオが強引に遮った。スウィートは驚いて目を見開いた。
 まさかシアオが反論してくるとは思ってなかったのだ。シアオの目を見てみると、しっかり自分を見据えていた。

 あぁ、これは絶対に意思を曲げない目だ。何を言っても駄目な――

「……分かった。けど、無茶はしないでね。お願いだから…」

「う、うん!」

 スウィートが控えめに言うと、シアオは嬉しそうな顔をした。
 本当は、何といおうと止めようと思ったのだけれど。絶対止めなければ、と思っていたのだけれど。
 何故かあの目を見ると、絶対止めれないと思った。

(どこかで……見たことがある気がする……。意思を全く曲げない目――)

 どこだっただろうか?そんな目をしていたのは一体、誰だったのだろうか?自分はいつ、見たのだろうか?
 スウィートは急いで頭から考えを振り払う。
 そんな事は後でも考えられる。今はライボルト達の方に集中しなければ。

 スウィートは未だに戦っている3匹に呼びかけた。

「皆はラクライ達をお願い! 私がライボルトの相手をするから!」

「え、それこそ無茶だって!」

「そうよ! 危ないわ、ってしつこいわね! シャドーボール!」

「スウィート、無茶をするな! 叩きつける!」

 フォルテとアルの攻撃でラクライ1匹が倒れたり、答えが全て批判の言葉だったり。
 しかし今はそんな事を気にしている場合ではない。
 ごめん、と心の中で呟きながらもスウィートはライボルトの方に向かった。

 シアオ達はスウィートを止めようと言葉をかけたが、一向に止まる気配はない。むしろ突っ込んでいる。
 それにラクライ達が攻撃してきてきちんと言葉かけも出来ない。
 シアオはスウィートの方をチラッと見てから、声をあげた。

「フォルテ! アル! とりあえずスウィートの言うとおりにしよう! それでとっとと加勢しに行こう!」

「アンタの意見、珍しく正論じゃない。賛成、よ!」

「フォルテと言うとおりだな、とにかく早めに終わらせるぞ!」

 こんな時でも相手を貶すことができる2匹は本当に凄い。
 ただシアオのツッコミは流石に入らないが。というかそんな事をしている暇はない。

「はっけい!」

「火炎放射ッ!」

「アイアンテール!」

 何故かこんな時には息ピッタリな3匹。
 攻撃は1つ1つ、ラクライ1匹ずつを狙い、全員をノックアウトさせた。
 そしてその後、フォルテが一息つこうとすると同時に、「う!」という声が2匹から聞こえた。

「どーしたのよ。固まっちゃって」

 フォルテが2匹を見ると、体を硬直させて全く動いてなかった。
 顔を見ると……引きつっている。シアオは口をパクパク動かせているが、生憎フォルテは読唇術など使えないので分かるはずも無い。
 フォルテが怪訝そうな顔で、2匹に「どうした」などと尋ねていると、ようやくアルから返事が返ってきた。

「どう、やら…………マヒ……したらし、い……」

「…………。」

 アルの途切れ途切れの言葉を聞いて、フォルテは表情1つ変えず固まった。と思いきや

「う、嘘でしょ!? スウィートの加勢いかなきゃなんないのに……! あぁぁぁあぁ……!! 癒しの種とか、クラボの実……」

 いきなり焦りながらバックの中をあさり始めた。
 ……あの様子では当分見つかりそうにも無いな、と思ったアルだった。




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